覚え書:「今週の本棚・新刊:『遺骨 戦没者三一○万人の戦後史』=栗原俊雄・著」、『毎日新聞』2015年09月13日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『遺骨 戦没者三一○万人の戦後史』=栗原俊雄・著
毎日新聞 2015年09月13日 東京朝刊

 (岩波新書・799円)

 戦後70年がたち日本という国家の本質は本当に変わったのか。『戦艦大和』『シベリア抑留』と一貫して日本の戦争から問い続ける著者が今回選んだのは「戦没者遺骨」だ。

 国内外の地中に眠る同胞たちのうち、身元が判明して遺族の元に帰る遺骨は極めて少ない。その重要性を誰もが認識しつつも経済成長の陰で後回しにされてきた。沖縄の民間有志が遺骨の側(そば)にあった万年筆から遺族を探し当てた事例が「奇跡的」とされる実態に驚く。

 為政者たちの無為無策によって多くの無辜(むこ)の民が死に追いやられた。しかし一億総懺悔(ざんげ)の「戦争被害受忍論」によって責任を覆い隠し、死してもなお「棄民」する国家の冷酷ぶりを明らかにしている。

 さて、この国の政府は原発避難者の人数すら正確に調べもせず、理不尽な線引きによって被害者を限定している。さらには多くの国民が懐疑の目を向ける東京五輪原発再稼働のため、避難者を追い立てている。著者は「国家はときに国民に対して残酷」であり、「その負債の勘定書は国民に回されて、何十年たっても清算されない」と言う。今の日本は違うと言い切れるのだろうか。(行)
    −−「今週の本棚・新刊:『遺骨 戦没者三一○万人の戦後史』=栗原俊雄・著」、『毎日新聞』2015年09月13日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150913ddm015070052000c.html








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