覚え書:「マスコミ漂流記 [著]野坂昭如」、『朝日新聞』2015年10月25日(日)付。

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マスコミ漂流記 [著]野坂昭如
[掲載]2015年10月25日   [ジャンル]ノンフィクション・評伝 
 
 1956年、三木鶏郎事務所で働いていた著者は数えで27歳。焼け跡こそ消えていたものの放送、音楽、広告などいわゆるギョーカイもまだ固まっておらず、うさん臭い人物も才能あふれる青年も入り交じって活気を放つ中、著者の「漂流」が始まる。芸能マネジャー、ラジオコント作家、CMソング作詞家……「小説家という一本杭」にどうにか引っかかり、68年に直木賞を受賞する直前までの12年間の日々が描かれる。
 小説誌の72年1月号から73年にかけて連載されたので、過去を少し自虐的に誇張した面もありそうだが、小説家を目指しての奮闘が真率に語られ、その後、加速度的に縦横無尽となる活動への雌伏の期間が、鮮やかに浮かび上がる。
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幻戯書房・3024円
    −−「マスコミ漂流記 [著]野坂昭如」、『朝日新聞』2015年10月25日(日)付。

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