覚え書:「名前も呼べない [著]伊藤朱里」、『朝日新聞』2015年12月20日(日)付。
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名前も呼べない [著]伊藤朱里
[掲載]2015年12月20日 [ジャンル]文芸
恋愛や仕事、家族関係にもがき苦しみながらも誠実に向き合う主人公の姿が胸に迫る。第31回太宰治賞受賞作。
25歳の恵那は、元職場の女子会で不倫相手が娘を授かったと知って動揺する。「恋人」との日々の回想をはさみ、彼女が抱える接触恐怖症や家族に関する過去のつらい記憶が少しずつ明かされていく。
深刻な事態に直面するとへらへら笑ってはぐらかしてしまう恵那のように、物語で重要な存在の「恋人」が誰なのかを終盤近くまで明かさない巧みな語りがいい。「やりたくないことはしたくない。自分として生きてくだけで沢山(たくさん)だもの」と恵那を励ます親友メリッサが痛快で引き込まれる。他1編を収録。
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筑摩書房・1620円
−−「名前も呼べない [著]伊藤朱里」、『朝日新聞』2015年12月20日(日)付。
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