覚え書:「各駅停話:573東北新幹線:12 古川 人の世に逆境なんてない」、『朝日新聞』2016年02月01日(月)付。

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各駅停話:573東北新幹線:12 古川 人の世に逆境なんてない
2016年2月1日

(写真キャプション)「デモクラシーの原点に立ち返る場所であり続けたい」と館長の大川真さん=宮城県大崎市吉野作造記念館
 マンホールの蓋(ふた)を研究している人と一緒に半日ばかり街を歩いたことがある。普段はその存在すら忘れがちだが、デザインには地域の特色があり、街の歴史が垣間見えるのがおもしろいという。誰もが見向きもしないことに光をあてて調べる。まさに「無用学」といってもいいかもしれない。

 民衆の利益や幸福、考えを政治の根本におく「民本主義」を唱え、大正デモクラシーを主導した思想家の吉野作造(1878〜1933)も、旺盛な好奇心の持ち主だった。江戸時代の混浴文化や西洋神話の女性軍団アマゾネスも研究し、政治学者の顔からは一見かけ離れた面もあった。

 そんな吉野の人物像や世界観を紹介したのが、生まれ故郷の宮城県大崎市にある「吉野作造記念館」だ。JR古川駅から車で約5分。開館は1995年。「ユーモアと諧謔(かいぎゃく)の精神をもって権威や権力に抗し、『文化』の意味を問い続けたのが吉野だった」。館長の大川真さんはそう語る。

 古書好きで趣味人だった吉野。東京帝大教授を辞し朝日新聞社に転職したが、筆禍事件で退社せざるを得なかった。「人世に逆境は無い」と好んで揮毫(きごう)した。

 そう、なんとかなる。(編集委員・小泉信一)

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    ーー「各駅停話:573東北新幹線:12 古川 人の世に逆境なんてない」、『朝日新聞』2016年02月01日(月)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12189143.html



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