覚え書:「圏外編集者 [語り]都築響一 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞』2016年02月07日(日)付。

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圏外編集者 [語り]都築響一
[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)  [掲載]2016年02月07日   [ジャンル]社会 

■必要に迫られた表現の力

 モノだらけゆえに超個性的な若者の部屋を紹介した写真集『TOKYO STYLE』など、ユニークな本の企画・執筆・撮影で知られる都築響一が、その半生を語る。
 本書に役立つマニュアルを期待してはいけない。編集会議や読者層を想定するといった定石を否定するからだ。すでにネットにあるような情報は二番煎じ。ストリートや現場にこそ、ネタが転がっている。重要なのは、自分が本当にそれを面白いと思っているかだという。さらに本書では出版界の未来も見据える。
 改めて彼の仕事をたどると、境界線のアートに対する感度が高い。世界各地のロードサイドの珍風景、ラブホテル、死刑囚の俳句、地方のラッパー、エロ雑誌の投稿画。アカデミックな評価を期待せず、必要に迫られて絞りだされた表現には、芸術の制度から生産される作品とは異なる、根源的な力がある。様々な業界批判を通じて、露(あら)わになる現実を直視せよ、というメッセージが全編から伝わってくる。
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 朝日出版社・1782円
    −−「圏外編集者 [語り]都築響一 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞』2016年02月07日(日)付。

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必要に迫られた表現の力|好書好日



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圏外編集者
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