覚え書:「今週の本棚・新刊 『花の神話伝説事典』=C・M・スキナー著」、『毎日新聞』2016年03月27日(日)付。
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今週の本棚・新刊
『花の神話伝説事典』=C・M・スキナー著
毎日新聞2016年3月27日 東京朝刊
(八坂書房・3240円)
ギリシャ、ローマ、日本などの神話や、キリスト教、仏教説話に登場する花や樹木を解説した読む事典。著者は米国の作家で、原著は1911年の刊行。菊や桜など日本に関する記述にはやや違和感もあるが、約180項目の植物を挿絵や絵画とともに収録した情報量の多さと、著者の博識には目を見張る。
裏表紙に、17世紀のフランス画家の神話画「ヒマワリに変じるクリュティエ」の一部を使用。ギリシャ神話の太陽神アポロンに捨てられた悲しみのあまり、水の妖精クリュティエはヒマワリ(日輪草)に変身したと伝える。ところが、ヒマワリはアメリカ産なので、この話のもとになった花としては、あり得ない。ヒマワリは太陽の方に顔を向けると考えられていたからだが「その不恰好(ぶかっこう)な花とそれを支える堅い頸(くび)はそうたやすく動くものではない。もっと慎ましやかな花であったと想像しなければ」と喝破する。古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』ではクリュティエは紫色のヘリオトロープの花。著者はこれも「太陽の方を向かない」から間違いとして、過去引き合いに出されてきた花々を列挙する。=垂水雄二、福屋正修訳(な)
−−「今週の本棚・新刊 『花の神話伝説事典』=C・M・スキナー著」、『毎日新聞』2016年03月27日(日)付。
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