覚え書:「愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

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愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ
[評者]蜂飼耳(詩人・作家)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]文芸 
 
 ヨーロッパの昔話といえばペローやグリムが思い浮かぶ。それらの成立に重要な影響を与えたのが十六世紀半ばにヴェネツィアで出版された『愉(たの)しき夜』だ。作者ストラパローラは、民間伝承の魅力と面白さに記述文学としての可能性を見いだした。ヨーロッパ最古の昔話集とも称される本書には、竜退治や動物婿や報恩の物語など、長い間語り伝えられてきたモチーフが詰まっている。
 漁師に捕らえられたマグロが、逃がしてくれた恩を忘れずに漁師を助ける物語「あほうのピエトロ」。全身毛むくじゃらで山野に暮らす野人が登場する「グエッリーノと野人」。「猫」は、ペロー童話「長靴をはいた猫」の最古のかたちを示す。本書の段階ではまだ長靴をはいていない。
 ストラパローラの昔話は、これまで日本では翻訳や紹介の機会がほとんどなかった。解説も丁寧。昔話とは、人間の希望と失望と欲望を濃縮して出来た美酒だと、改めてわかる。
    −−「愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

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ヨーロッパ最古の昔話集|好書好日


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