覚え書:「ひと 笹森恵子さん=米国に移住した被爆者」、『毎日新聞』2016年5月28日(日)付。

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ひと
森恵子さん=米国に移住した被爆

毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊


森恵子(ささもり・しげこ)さん(83)
 「ヒロシマへようこそ。勇気を持って、来てくれてありがとう」

 「原爆乙女」の一人として渡米し、26歳から米国在住。郷里の広島へたまたま帰っている時に、オバマ大統領が訪れた。

 核兵器廃絶への道筋を示せなかった大統領に批判もあるが、「平和の思いを実現できないのは、反対する政治勢力がそれだけ強いということ。でも、大統領には感じたことを発信するパワーがある」と今後に期待する。

 13歳だった。真っ青な空に銀色の飛行機がきらきら光り、白い雲を引いた。「見て、きれいよ」。指をさした瞬間、吹き飛ばされて気を失った。

 大やけどを負い、家族は鏡を隠した。ある日、庭で鏡の破片を拾い、のぞき込んだ。映るのは鬼のような形相。皮膚が溶けた鼻、ケロイドでピンクになった頬、めくれた唇−−。大きな目だけは自分の目だった。

 やがて、賛美歌の美しさにひかれて教会に通い、米国人ジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏と出会う。後の養父だ。被爆から10年後、米国でケロイド治療を受ける原爆乙女の一人に。癒着していた首とあごを切り離し、皮膚を移植した。

 「ケロイドはだんだん薄らぐの。でも、触ってごらん」。記者の手を顔面に導いた。特に鼻のでこぼこが目立っていた。

 「この顔になったのは、ヒロシマを伝えるための神の使命。『絶対平和に』という気持ちは譲れない」。世界各地を回り、体験を伝えている。<文・竹下理子 写真・山田尚弘>

 ■人物略歴

 女学校の学徒動員先で被爆。現在は米国籍も取得。カリフォルニア州の自宅近くで、息子と2人の孫が暮らす。
    −−「ひと 笹森恵子さん=米国に移住した被爆者」、『毎日新聞』2016年5月28日(日)付。

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