覚え書:「【書く人】行儀悪さでガス抜きを『世界マヌケ反乱の手引書』 リサイクルショップ店主・松本哉さん(41)」、『東京新聞』2016年09月11日(日)付。

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【書く人】

行儀悪さでガス抜きを『世界マヌケ反乱の手引書』 リサイクルショップ店主・松本哉さん(41)

2016年9月11日
 
 東京・高円寺を拠点に反原発デモなどを行ってきた「素人の乱」というグループがある。松本哉さんはその代表者の一人。学生の頃から「貧乏くささを守る会」や、キャンパスで飲めや歌えやの大宴会を企画。やんちゃを繰り返してきたユニークな履歴の持ち主だ。
 社会人となって、仲間たちとリサイクルショップやゲストハウスを運営。自分たちの居場所で楽しむために「世界各地で勝手なことをしている連中が集まるバカセンター」の必要を訴える。「マヌケ」とは社会の秩序からはみ出してしまう異色な人たちの謂(い)いで、本書はそんな「マヌケ」たちが広く世界と繋がり、意味不明な化学反応を起こす活動や目論見(もくろみ)を紹介する。
 「決められたルールを守る秩序だった社会はどうも居心地が悪い。といって変革を目的に組織やイデオロギーを盾にした正面からの反乱も苦手で、愉快犯やハプニングのように、社会の隙間の際どい線で行儀悪くはみ出した仲間たちと勝手なことをしている」
 松本さんたちの「反乱」は、だから生活や日常から大きく逸脱しない。孤立せず、つまはじきもせず、地域の中で場所を確保しながら、時には面倒な世間の規則をクリアする地味な努力もつづられる。「でも全部従うのは癪(しゃく)ですし、リスクを回避する裏技もある。地に足をつけながら、できる限り自分たちに都合よく、出入り自由で、成功も失敗もあまり気にせず、楽しんで反乱を多発させる。震災や原発事故でデモがよみがえり各地に拡散したように、この社会が病んでぎすぎすする前に、悪だくみを拡散できればいい」
 多種多様なデモ、旅先での口コミ、本の出版などを通して、この十年ほど日本のみならずアジアやヨーロッパで自分たちと同じような「マヌケ」活動をする若者たちと知りあった。公共機関やマスコミからの一方通行の情報だけでなく、解放区のような場で顔をつき合わせながら、何か面白い交流ができないか。そんな思惑で今月十一〜十七日に東京の各スポットで、内外からアーティストらが集まり音楽ライブ、トークや交流会など盛りだくさんのイベントフェス「NО LIМIT 東京自治区」が催される。
 「狭く閉じた遊びや情報だけでなく、見知らぬ世界とつながることが、反乱への一歩かもしれない」
 筑摩書房・一四○四円。
 (大日方公男)
    −−「【書く人】行儀悪さでガス抜きを『世界マヌケ反乱の手引書』 リサイクルショップ店主・松本哉さん(41)」、『東京新聞』2016年09月11日(日)付。

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