覚え書:「著者に会いたい レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密―天才の挫折と輝き コスタンティーノ・ドラッツィオさん [文]守真弓」、『朝日新聞』2016年09月11日(日)付。

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著者に会いたい
レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密―天才の挫折と輝き コスタンティーノ・ドラッツィオさん
[文]守真弓  [掲載]2016年09月11日

レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密」の著者、コンスタンティーノ・ドラッツィオさん=山本和生撮影
 
■人間くささ、身近に感じて

 ローマ現代アート美術館でキュレーターとして働くかたわら、ルネッサンス美術の研究を続け、ある日、気がついた。「レオナルドは、コンテンポラリーアーティストだったのでは」
 当時の画家は、依頼者の要望に応じる「職人」だったが、レオナルドは芸術家であり、知識人だった。芸術を縛っていた宗教的制約や慣習を打ち破って革新的なアイデアを実行しては失敗し、なかなか世に認められなかった。「先を見つめる芸術家は時代に理解されない」。仕事で出会う多くの芸術家が直面している悩みを、500年前に味わっていた画家。彼の人生を描きたいと思ったという。
 本書の執筆中にも、油彩の肖像画が新たにみつかったと報道されるなど、レオナルドをめぐる「新発見」はいまも尽きない。だが、その情報は玉石混交。小説『ダ・ヴィンチ・コード』の大ヒットにより、絵の中に宗教的メッセージが込められている、といった物語を信じる人も多い。連日、膨大な資料にあたり、真実と「神話」をわける作業にあたった。
 そうして浮き彫りになったのは、神話とはほど遠い姿だ。美しい使用人を溺愛(できあい)し、何度盗みを働かれても突き放せない思いをただ、メモに記す弱さ。傑作「最後の晩餐(ばんさん)」ですら、保存を考えない画法で数年で劣化させてしまう。「勇気ある人間ではあるが、読みが浅い」性格。
 「なぜ、人間臭い部分ばかりを書いたのか? それが真実だからです。深淵な分析で煙(けむ)に巻く研究者もいるが、私は普通の人間だったレオナルドの現実の面白さを伝え、その作品を身近に感じてほしかったのです」
    ◇
 上野真弓訳、河出書房新社・3024円
    −−「著者に会いたい レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密―天才の挫折と輝き コスタンティーノ・ドラッツィオさん [文]守真弓」、『朝日新聞』2016年09月11日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2016091100014.html



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