日記:「旬英気鋭:「在野」の自由で今を切る=辻田真佐憲さん」『四国新聞』2016年10月07日(金)付。

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良記事です→史実を歪曲した「歴史観」の広がりに危機感を隠さない…「歴史に解釈は不可避とはいえ、実証的な史実の集積が全ての議論の出発点であるべきです。歴史を語るのではなく歴史に語らせたい」。

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 史実を歪曲した「歴史観」の広がりに危機感を隠さない。いわく「南京大虐殺はなかった」「日本は実は戦争に勝っていた」…。「善悪が明快で感情移入しやすい物語が、思うに任せない人々の鬱憤を吸収している」と近現代史研究家の辻田真佐憲さんは言う。

 政府に批判的な報道を「反日」「偏向」と決めつける風潮も同根とみる。「メディアによる権力監視は近代の基本原則です。報道が機能不全に陥ったとき何が起こるのか。大本営の歴史を通じて考えてほしかった」

 新著「大本営発表」(幻冬舎新書)では「にほんメディア史の最暗部」というべき戦時中の情報統制を取り上げた。戦果を誇張する一方で損害は隠蔽し、「全滅」を「玉砕」と言い換えた陸海軍の官僚の思惑や内情を解説。特ダネを巡って軍部にすり寄り、利用された報道の自壊が国家権力の腐敗を招き、膨大な犠牲を生んだ経緯も詳述した。

 歴史的事実の叙述に「解釈」が紛れ込まないよう努めた。「歴史に解釈は不可避とはいえ、実証的な史実の集積が全ての議論の出発点であるべきです。歴史を語るのではなく歴史に語らせたい」大学院を中退後、政治と文化の関係に着目して軍歌、君が代プロパガンダの歴史を書いてきた。ここ数年、気になっているのは政治と文化の密着ぶりだ。

 「アニメやゲームが国益と結びつき、映画や小説の歴史観が問題視される社会は、健全とは思えない。文化は政治と距離を置くべきだし、知識人は斜に構えて政治を評価意思、時には冷水を浴びせるべきです」

 だが学問的な厳密さにこだわるアカデミズムとは一線を画す。「実証的な歴史研究を踏まえつつ、現代の問題に切り込みたい。それには『在野』の自由が必要なんです」
    −−「旬英気鋭:「在野」の自由で今を切る=辻田真佐憲さん」『四国新聞』2016年10月07日(金)付。

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