覚え書:「帰ってきたモンジロー 青春18きっぷ、ウッキウキ旅」、『朝日新聞』2016年08月11日(木)付。

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帰ってきたモンジロー 青春18きっぷ、ウッキウキ旅
2016年8月11日


根府川駅(神奈川県)で途中下車。東海道線では珍しい無人駅で、ホームや駅舎などから相模湾が望める
写真・図版
 夏休みといえばやっぱり旅行。妹のキー子も連れて旅に出たいなあ、でも先立つものがないなあ……。そんなモンジローに、鉄道好きの友人が「青春18きっぷ」をすすめてくれたよ。どんな切符なんだろう?

 ■年齢制限なく乗り放題

 まずはJR東日本に聞いてみたでござる。全国のJR線の普通・快速列車が2370円で1日乗り放題の切符なんだって! 5回分セット(計1万1850円)で、春、夏、冬に販売期間と利用期間を限定して販売。「18」とあるけど年齢制限はない。

 ウッキー! これは本当にお得。1人で5回使ってもいいし、5人までのグループで利用することもできる。

 でも、こんなにお得な切符を販売して、JRは損をしないのかな? 旅行情報サイト「青春18きっぷ研究所」を運営するタビリスの鎌倉淳さんによると、国鉄時代の1982年に「青春18のびのびきっぷ」として発売されたのが最初だったそうだよ。

 春、夏、冬は学生が長期間の休みに入るので乗客が減る。そこでこの時期の列車を有効活用しつつ、売り上げも確保しようというのが狙いだったそうだ。切符を刷るだけで売り上げがあがるんだ! キキッ。すごいアイデア

 JR東日本によると2015年度には、JR6社合計で前年度比3%増の約71万枚も売れた。「安さに加え、国鉄分割民営化後はJR各社をまたいでどこでも乗り降りできる自由さが受けて、長く様々な世代から愛されてきました」と鎌倉さん。

 注意点もある。トイレがない列車もあるから、途中下車の際にはなるべくトイレに寄ってから次の列車に乗ろう。車内販売はないことがほとんどなので、食事や飲み物もある程度は自分で用意を。

 利用期間と販売期間が違うってことも要注意だッキ。今夏の青春18きっぷは9月10日まで使えるけど、販売期間は8月31日までなんだ。秋には販売されない。だけど例年、秋版18きっぷと言われる「秋の乗り放題パス」があるよ。青春18きっぷとは利用条件が違うので、JR各社のホームページなどで調べてみたほうがいいでござる。

 ■「長時間一緒」を楽しむ

 旅に出たくてウキウキしてきた。でもいざ出かけようと思うと、行き先に迷うなあ。「旅テツ」のフォト・ライター、矢野直美さんにアドバイスをもらったよ。「18きっぷのシーズンになると、買わなきゃ、乗らなきゃという気分になる」という矢野さんは、今春も東京から九州まで4日かけて回ってきたんだって。

 まず首都圏のおすすめは房総半島(千葉県)。内房線外房線を乗り継いでぐるっと一周。車窓には夏の海、途中下車をすれば新鮮な魚介を楽しめる。一周乗りっぱなしで5時間くらいだから日帰り旅行にぴったり。東海道線を途中下車しながら熱海駅静岡県)あたりまで行くのもいい。キキッ、温泉がある!

 関西圏は山陽線の旅がおすすめ。三原駅広島県)から広島駅までは呉線に乗り換えると、瀬戸内海の多島美がより堪能できる。終点は門司駅北九州市)。長距離コースだから途中1、2泊して、交通費が安くすんだ分、宿や食事を奮発してもいいかも。

 「18きっぷの旅の魅力は家族が同じ空間で長い時間を一緒に過ごせること。大人はお酒を飲んでいてもいいし、子どもも大人も本や漫画を読んでいたっていい。気になる景色に出会ったら、途中下車して楽しんで」と矢野さん。

 今年から使える「裏ワザ」も教えてもらったでござる。

 3月に開業した北海道新幹線青春18きっぷで乗れちゃうんだ。ウキッ。新幹線が開業すると、並行する在来線は第三セクターに営業が移管されてしまい、その区間は18きっぷで移動できなくなることが多い。でも、北海道新幹線奥津軽いまべつ青森県)―木古内(北海道)間はオプション券(片道2300円)を買うと、普通車の空いている席に乗れる。ほかに、特急などに乗れる区間もある。

 『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』などの著書がある杉山淳一さんは、たとえば北海道や四国まで飛行機で行き、その先で青春18きっぷを使うという楽しみ方を教えてくれたよ。

 「安さだけにこだわると無理な長距離移動になることがあるし、観光地を往復したいならバスの団体旅行のほうが安上がり。列車に乗ること自体を楽しみながら、見たことのない景色を見たり行ったことのない場所を訪ねたりするために利用するのがいい」

 モンジローも休暇を取って、キー子と一緒に東海道線熱海駅まで行ってみたでござる。途中、小田原駅で降りて小田原城を観光し、東海道線では珍しい無人駅の根府川駅(神奈川県)で駅舎や跨線橋(こせんきょう)から相模湾の景色を堪能したよ。熱海ではもちろん温泉。風呂上がりのビールは最高だったッキ。

 ◆次回は17日で、「夏の素足」の予定です。

    −−「帰ってきたモンジロー 青春18きっぷ、ウッキウキ旅」、『朝日新聞』2016年08月11日(木)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12506533.html

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