覚え書:「著者に会いたい 砂の果実―80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々 売野雅勇さん [文]藤崎昭子」、『朝日新聞』2016年11月13日(日)付。

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著者に会いたい
砂の果実―80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々 売野雅勇さん
[文]藤崎昭子  [掲載]2016年11月13日

作詞家の売野雅勇さん=早坂元興撮影
 
■本能に刻まれた「郷愁」を詞に

 中森明菜の「少女A」、チェッカーズの「涙のリクエスト」、郷ひろみの「2億4千万の瞳」などなど、Jポップ史を飾る歌詞を書いてきた。作詞活動35周年を機に、ブレイク前夜の歌手や憧れの大物との出会い、作詞術など、歌と歩んだ半生をつづった。
 まだコピーライター・雑誌編集者だった70年代の話も含め、場面ごとの記憶が驚くほど鮮やかだ。交わされた言葉だけでなく、建物や部屋の様子、相手の装いがありありと伝わる。「自分でもよく覚えているなあと。ビジュアルの情報に強く影響を受けるんです。車に乗るときも、たとえ遠回りになってもきれいな道しか通りたくないほど」
 念願かなって詞を提供した矢沢永吉との思い出も興味深い。「この声を聴くと、生きることが、愛(いと)おしくてたまらなくなる」と書くその歌声や、自身の代表曲に共通するキーワードが、「郷愁」だ。「具体的な狭い意味ではなく、初めてなのに懐かしい、本能に刻まれた根源的な感覚。あらかじめ失われた人生を思うような。ヒット曲にはものすごく重要な要素だと思います」
 旧来の歌謡曲にない世界観を詞に持ち込んだ80年代。「クラブシーンや渋谷系の走りなど、面白いことが同時多発的に起きる、ワクワクする時代だった」と振り返る。
 現代のワクワクを求めて、日本語で歌うロシア出身の美女3人組「Max Lux(マックスラックス)」を育成中だ。「長年の相棒の芹澤廣明さんが欧米の歌手に曲を書いていることに刺激され、世界戦略に目覚めた」。16日、3人は売野作品のカバーアルバム「砂の果実」を出す。芹澤さんと準備中のオリジナル曲も、郷愁を秘めたキーワードが満載だという。
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 朝日新聞出版・1728円
    −−「著者に会いたい 砂の果実―80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々 売野雅勇さん [文]藤崎昭子」、『朝日新聞』2016年11月13日(日)付。

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