覚え書:「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! [文]池澤春菜(声優・コラムニスト)」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。
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文庫この新刊!
池澤春菜が薦める文庫この新刊!
[文]池澤春菜(声優・コラムニスト) [掲載]2016年11月06日
(1)『最終戦争/空族館(アエリウム)』 今日泊亜蘭著 日下三蔵編 ちくま文庫 1188円
(2)『くじ』 シャーリイ・ジャクスン著 深町眞理子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1080円
(3)『シャーロック・ホームズたちの冒険』 田中啓文著 創元推理文庫 972円
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短編集が好きなようだ。自分のことなのに「ようだ」というのも変な話だけれど、選んだ本を見ていると短編集が多い。フルコースのような長編もいいが、短編集を一粒ずつつまんでいくのも、アフタヌーンティーのようで楽しい。
(1)はSF界の長老と言われた今日泊亜蘭(きょうどまりあらん)の短編集。30カ国以上の言葉を操る博覧強記の鬼才が紡ぐ物語は、縦横無尽な想像力と流麗な筆致が心地よい。SFの楽しみとはこれか、と原点に返る気持ち。
(2)は糖衣の中に苦い核を忍ばせた大人な短編集。身のうちがぞわりとする後味の悪さだが、甘さを求めついつい次を読んでしまう。甘い苦い甘い苦いの繰り返しにはまる。
(3)もしも、あの人が名探偵だったら……ルパンに大石内蔵助の妻、ヒトラー、小泉八雲、思わぬ人物が繰り広げる名推理が最高。物語の隙間を縫って、あり得たかも知れない逸話を自然に挟み込む手腕に感心していると、最後に来るダジャレで膝(ひざ)が抜ける。
少し不思議、怖い不思議、洒脱(しゃだつ)な不思議、あなたはどれが好き?
−−「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! [文]池澤春菜(声優・コラムニスト)」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2016110600003.html