覚え書:「日本会議って何だ 関連本ブーム、海外メディアも特集」、『朝日新聞』2016年09月05日(月)付夕刊。
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日本会議って何だ 関連本ブーム、海外メディアも特集
園田耕司2016年9月5日夕刊
最近出版された主な日本会議関連の書籍=矢木隆晴撮影
憲法改正運動を進める政治運動団体「日本会議」を取り上げた書籍の出版が相次いでいる。硬いテーマにもかかわらず、いずれも好調な売れ行きだ。ブームの背景を探った。
火付け役は、5月に出版された菅野完(すがのたもつ)氏の「日本会議の研究」(扶桑社)。6刷15万3千部(8月29日現在)のベストセラーとなっている。
菅野氏は2008年ごろ、ヘイトスピーチの街頭デモを「これは放っておいては危ない」と感じ、調査を始めた。ネット上の書き込みの出典元である保守系論壇誌を丹念に分析し、日本会議の存在に気づいた。菅野氏は「14年秋ごろからネット上で日本会議について騒がれ始めたが、陰謀論めいてピントがずれた見方が多く、『そうじゃないよ』とツイッターでつぶやき始めた」と語る。
ネット上で発表した論考が扶桑社系のウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」の編集者の目にとまった。15年2月から「草の根保守の蠢動(しゅんどう)」というタイトルで連載を始め、それを「日本会議の研究」としてまとめた。
元共同通信記者の青木理氏は今年7月、「日本会議の正体」(平凡社)を出版した。青木氏は執筆の動機について、「日本会議の実態とは何なのか、きちんと書くべきだ、と考えた」という。そのうえで「日本会議がこれだけ力を持っているように見えるのは、日本社会そのものが変質してきているのではないか」と指摘する。
海外メディアも関心を寄せる。英エコノミスト誌は15年6月、日本会議を特集し「国粋主義や露骨な歴史修正主義を掲げる、最も強力な日本のロビー団体の一つ」と紹介した。
今年7月13日、日本会議の田久保忠衛会長(杏林大学名誉教授)は、海外メディアの求めに応じて、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。
「日本が危険な、極めて好戦的な状態にあり、そこにナショナリストである安倍(晋三)首相が登場した、という報道がありますが、私はそうは思わない」。田久保氏は海外メディアの報道ぶりに反論した。さらに、日本の憲法には軍隊の規定がないことを挙げ、「安倍さんは(日本を)『普通の国』にもってこようとした唯一の政治家だ」と強調した。
最近の出版ブームをバッシングととらえる日本会議幹部もいるが、メリットもある。関係者によると、日本会議の現在の会員数は約3万8千人だが、知名度が上がり、5月以降、入会の申し込みが増えているという。(園田耕司)
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【日本テレビディレクター出身の水島宏明・上智大教授(ジャーナリズム論)の話】 安倍政権は歴代内閣の中でも長期間にわたって高支持率を保ち、強い改憲志向を持つという特異な存在だ。安倍政権が一体何をしようとしているか、国民はその本音を知りたいと考えている。そんなとき、安倍政権中枢に強い影響を与えているとされる日本会議が、どんな思想を持ち、どんな政治運動をしているか、国民の大きな関心事だろう。日本会議に関する調査報道は、いまのジャーナリズムが果たすべき最も重要な役割だと思う。
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〈日本会議〉 国会議員懇談会には衆参両院の約280人が所属する。安倍晋三首相が特別顧問を務め、閣僚ら政権中枢が役員に名を連ねる。憲法改正運動では、日本会議系の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が9月、全国縦断キャラバンを開始した。天皇陛下の生前退位をめぐる皇室典範改正論議についても、小堀桂一郎・東大名誉教授(日本会議副会長)や、百地章・日本大学教授(同政策委員)らが積極的に発言している。
−−「日本会議って何だ 関連本ブーム、海外メディアも特集」、『朝日新聞』2016年09月05日(月)付夕刊。
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http://www.asahi.com/articles/ASJ8Y5CQ0J8YUHBI01M.html
【怒涛の5刷!】
— 平凡社新書 (@HeibonshaShin) 2016年9月5日
『日本会議の正体』の5刷を決めました。累計部数8.5万部。出来日は9/16です。取次ラインにて搬入します−(なので書店さんへの到着がちょっと早くなります)。
本日の朝日夕刊にも日本会議特集が!(部数は4刷時点) pic.twitter.com/9WfJc9bj72