覚え書:「考・野党 私の見方:3 脱原発、再生への踏み絵 吉原毅さん」、『朝日新聞』2016年09月07日(水)付。

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考・野党 私の見方:3 脱原発、再生への踏み絵 吉原毅さん
2016年9月7日


吉原毅さん
 小泉純一郎元首相とタッグを組み、脱原発運動に取り組む財界人がいる。城南信用金庫の相談役、吉原毅氏。原発問題でいま一つ煮え切らない民進党はどう映っているのだろうか。原発再稼働推進論が大勢を占める経済界にあって、「野党」的に異論を唱え続ける意義を聞いた。

 ――民主党政権は短命に終わり、民進党の支持率も低迷しています。企業人からはどう見えますか?

 「民進党は何のための政党なのでしょうか。会社には定款があります。定款なくして会社なし。民進党は何のためにできた政党なのか、もう一度考えた方がいいと思う。今のままでは自民党に入れなかった人が民進党を作り、政治家になるために作ったような自民党の2軍に見えます。それなら1軍の方がいいやとなりませんか」

 ――厳しい指摘ですね。

 「原発問題への姿勢に、問題が象徴的に表れています。民進党内には、脱原発に反対する人もいて、党として原発反対を言えない。支持基盤の労働組合、中でも電力総連の顔色をうかがっているからでしょう。民進党が再生できるか、原発問題は一つの踏み絵。国民の多くが願っていることを実現しようとしない政党に、期待はできません」

 ■問われる存在意義

 ――原発推進論が強い経済界で、「原発ゼロ」を言えるのはなぜですか。

 「企業は金儲(もう)けだけでいいのでしょうか。尊敬される企業でありたいし、企業には社会的責任があります。危険で、クリーンでなく、高くつく原発に頼る社会は危険です。金融マンだったら金融を通じて、どういう社会にしたいのかを考えます。健全な未来を築くために必要なことではないでしょうか」

 ――あえて「異論」を唱えているということですか。

 「いいえ。自分は『野党』だと位置付けると万年野党になります。信じたことを続ければ、理解され『与党』となる日が来る、そう思っています。あえて対立軸を作ろうとすると、心からでないから見破られる。二大政党制が必要なら、自民党がよくない理由を明らかにし、民進党としての存在意義を明確に打ち出すべきです」

 ■私利私欲か公益か

 ――代表選では「発信力」も焦点になっています。

 「それがダメ。発信力に頼ろうということは、中身がないことの裏返しでしょう。では、なぜこれまで『原発ゼロ』を言えなかったのですか。その理由を明確に発信してほしいですね」

 ――「原発ゼロ運動」を一緒に展開している小泉氏の指導力には評価の声がある一方で、ポピュリズムとの批判もありました。

 「彼は損得関係なしに自分が正しいと思う方向に進みますよね。世のため、人のために自分一人でも動くぞという情熱、決断力、信念にリーダーシップを感じる。リーダーを動かす動機が私利私欲なのか、公益なのかによって、(政治家の評価は)大きく違ってくると思います」

 (聞き手・関根慎一)

 ■城南信金相談役・吉原毅(よしわらつよし)さん

 1955年生まれ。10年に城南信用金庫(東京都品川区)の理事長に就任。15年から相談役。11年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、「原発に頼らない安心できる社会へ」とのメッセージを発表。著書に「原発ゼロで日本経済は再生する」など。
    −−「考・野党 私の見方:3 脱原発、再生への踏み絵 吉原毅さん」、『朝日新聞』2016年09月07日(水)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12546831.html


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