覚え書:「悩んで読むか、読んで悩むか 距離をとって考えよう、方法は色々 荻上チキさん [文]荻上チキ」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。
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悩んで読むか、読んで悩むか
距離をとって考えよう、方法は色々 荻上チキさん
[文]荻上チキ [掲載]2016年11月06日
81年生まれ。言論サイト「シノドス」編集長。TBSラジオ「Session−22」パーソナリティー。
■相談 クラスでいじめ、どうしても気になる
クラスのある女子グループの一人が「いじめ」を受けています。ある授業で彼女が発言した時、「声が小さくて聞こえな−い」みたいな感じで何度も文句が飛びましたが、先生は何も言わないので、我慢がならないほどイライラしました。彼女とは特に親しくないので「自分は関係ないんだから」と思うのですが、どうしても気になります。
(中国地方、中学2年女子、13歳)
■今週は荻上チキさんが回答します
『ある日、私は友達をクビになった』(エミリー・バゼロン著)という本に、海外のいじめ事例が紹介されています。スマホ世代のいじめ事例が中心ですが、ネット社会だからというわけではない、普遍的な問題について考えることができます。
いじめはどの国にもあります。様々な先進国が、いじめ防止のための環境づくりに取り組んでいます。いじめ被害にあった生徒に対し、大人たちはどのように取り組んだのか。距離をとって考えるにも、本書のような議論が参考になると思います。
僕はいじめ対策のNPO代表をしています。講演でしばしば、「いじめを増やすことはできると思いますか?」と問いかけます。多くの場合、参加者は驚きつつも「出来る」と答えます。「方法は?」と尋ねると、「軽いいじめを放置する」「体罰や連帯責任などのストレスを与える」「先生が率先して特定の生徒をいじる」など多くのアイデアが出てきます。
そこで、「増やす方法と、逆のことをやるとどうなりますか?」と投げかけます。そう、いじめを「なくす」ことはできませんが、今「増やしている」要因を取り除いていけば、「減らす」ことができます。もちろん、起きたいじめを「止める」「発展させない」こともできます。
「止める」方法も、生徒自ら「傍観者から仲裁者になること」だけではありません。大人に詳細を伝えて環境を改善してもらうという仕方こそ重要です。今は法律で、担任の先生だけでなく、必ず複数の教師で対応しなくてはならなくなりました。担任が対応してくれなければ、校長先生やいじめ担当主任の先生に報告するのも手です。また、いじめに加担せず、いじめを受けている人の相談にのることで「シェルター(避難場所)」になるという選択肢もあります。
僕の共著『いじめの直し方』(朝日新聞出版、品切れ)にも書きましたが、学校は「特定の人たちの中から、仲良くする人を選ばなくてはいけない」システムです。その環境を改善するのは大人の義務です。
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次回の回答者は学者芸人のサンキュータツオさんです。
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■悩み募集
住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を差し上げます。
−−「悩んで読むか、読んで悩むか 距離をとって考えよう、方法は色々 荻上チキさん [文]荻上チキ」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2016110600017.html