覚え書:「円城塔 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

Resize4738

        • -

円城塔 書評委員が選んだ「2016年の3点」
[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]
 
(1)プラハの墓地(ウンベルト・エーコ著、橋本勝雄訳、東京創元社・3780円)
(2)HERE ヒア(リチャード・マグワイア著、大久保譲訳、国書刊行会・4320円)
(3)すべての見えない光(アンソニー・ドーア著、藤井光訳、新潮社・2916円)
    ◇
 一冊の本を読み終えたあとで覚えていることは、意外に少ないものだ。そのお話が語られた時制や、語り手の人称などはふつう、思い出せない。
 人間は話の筋や細部の描写を覚えることは得意だが、それ以外は意識にのぼっていなかったりする。作家が工夫するのは、いかにそうした、意識できない、記憶しにくい部分になにを仕掛けて、どんな効果を引き起こせるかである。
 (1)は本が人間をいかに利用して繁殖していくかの好例を示し、(2)は本の読み方自体を揺らがせる。しかし一番気になるのは(3)で、この本を読み終えたときの感動は一体何に起因するのか、得体(えたい)の知れない作用だとしかわからず、不安である。本には書かれていることだけが書かれているとは限らない。
    ◇
あちこちに手を広げてしまう拡大の年でまとまりきらず、成果はまた来年に
    −−「円城塔 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

        • -





http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016122500005.html


Resize3797


HERE ヒア
HERE ヒア
posted with amazlet at 17.01.15
リチャード・マグワイア
国書刊行会
売り上げランキング: 17,971