覚え書:「書評:地球の歴史(上)(中)(下) 鎌田浩毅 著」、『東京新聞』2017年01月22日(日)付。

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地球の歴史(上)(中)(下) 鎌田浩毅 著

2017年1月22日

◆宇宙とつながる命を実感
[評者]石弘之=環境史家
 宇宙史、地史、進化史といった、マクロの自然史の出版が世界的に盛んになってきた。本書も壮大な地球史である。百三十八億年前のビッグバンから説き起こして、銀河系、太陽系、地球の誕生、さらに生物や人類が登場し、その未来までが語られる。
 新たな発見や理論が登場するや、たちまちそれが覆されるダイナミックな分野でもある。宇宙物理学の進展や宇宙飛行士の活躍もあって、宇宙は身近な存在になってきた。その宇宙が私たちとどう繋(つな)がっているのかを理解するうえでも、格好な入門書である。
 地球ほど環境が安定し、厚い大気の層と大量の水を保持する惑星は他に見つかっていない。この環境が生命の誕生という地球史上最大のできごとを生み、地球は「生命の惑星」への道を歩み出した。海で生まれた小さな生命は、光合成、呼吸、多細胞化、有性生殖といったさまざまな仕組みを獲得し、ついには重力や乾燥した大気をも克服して陸上に進出する。しかし、超大陸の分裂や巨大噴火によって生物の大絶滅が起こり、生き残った生物は六千五百万年前の隕石(いんせき)衝突による地球環境の激変で淘汰(とうた)される。恐竜たちが絶滅し哺乳(ほにゅう)類による地球の支配が始まり、ついには人類が出現する。だが、宇宙の歴史からみれば、一瞬間にすぎない短い時間のなかで、人類は大気中の二酸化炭素を増やし、大気や水を汚染し、生態系を破壊し、自分らの生存環境さえ危うくするほど改変してきた。
 著者はあとがきで、「地球をまるごと捉え、全体を一つのシステムとして取り扱う」ことを提唱する。こうした「日常生活の時間軸をはるかに超え」た何万年、何千万年というスケールの視座を持つことにより、長期的な予測が可能になる。つまり、「過去は未来を解く鍵」になるという。
 数多くの著書やテレビ出演などで知られた著者だけに、平易でエピソードが豊富。三巻にわたる大著だが、一気に読むことができる。
 (中公新書・(上)(下)950円(中)907円)
<かまた・ひろき> 1955年生まれ。京都大教授、地球科学。著書『火山噴火』など。
◆もう1冊 
 井田喜明著『地球の教科書』(岩波書店)。地球はどのように作られたか、異常気象やエネルギー問題をどう考えればよいかを解説。
    −−「書評:地球の歴史(上)(中)(下) 鎌田浩毅 著」、『東京新聞』2017年01月22日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017012202000174.html



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