覚え書:「文庫この新刊! 東直子が薦める文庫この新刊! [文]東直子(歌人、作家)」、『朝日新聞』2017年01月08日(日)付。

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文庫この新刊!
東直子が薦める文庫この新刊!
[文]東直子歌人、作家)  [掲載]2017年01月08日
 
(2)『随筆集 一私小説書きの独語』 西村賢太著 角川文庫・994円
(3)『君に太陽を』 ジャンディ・ネルソン著 三辺律子訳 集英社文庫・1134円
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 (1)では、著者の現実と周囲の人々が色濃く反映された小説として震災以降の日々が克明に描かれている。時に語り手が女性となったり、対話が続いたり等(など)、様々な視点から、過去と現在、そして未来へと続く時間を思考する。「私は生き直すことができない。しかし私らは生き直すことができる」という著者の詩の一節が、その信念を象徴するものとして胸を突く。
 (2)には、自らを「ペシミスト」と呼ぶ作家の心情が率直に綴(つづ)られた随筆がつまっている。「野性時代」に一年掲載された表題作(未完)、文庫のあとがき、原作映画のパンフレット、高校の図書館だよりのアンケート等、スクラップブックを眺めているような雑多さもまた著者の独特の個性を感じさせ、揺るぎない。
 (3)は、芸術的な感性を秘めた双子の姉弟の成長を描く青春小説。正反対の性格ゆえに反発し、魅(ひ)かれあう二人に降りかかる不幸を軸に、それぞれの惑いが繊細に交錯する。自分が美しいと思うものを知ることは、自分を発見することでもある。
    −−「文庫この新刊! 東直子が薦める文庫この新刊! [文]東直子歌人、作家)」、『朝日新聞』2017年01月08日(日)付。

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