覚え書:「私の視点 難民支援 パレスチナに関心持って ピエール・クレヘンビュール」、『朝日新聞』2016年10月22日(土)付。

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私の視点 難民支援 パレスチナに関心持って ピエール・クレヘンビュール
2016年10月22日

ピエール・クレヘンビュールさん
 国連パレスチナ難民救済事業機関をご存じだろうか。1949年に設立され、中東に住む登録パレスチナ難民を支援する国連機関である。

 登録パレスチナ難民の数は520万人にも上る。私たちは、137の診療所と677の学校を運営し、人々の生活の向上を目指している。来週からの訪日に合わせ、今後の日本への期待を述べたい。

 実はパレスチナ難民と日本のつながりは深い。ガザ地区南部ハンユニスには、日本の援助で建設された診療所や学校が多く「日本地区」と呼ばれる場所がある。日本政府からこれまでに総額7億7800万ドル(約800億円)、2015年度には3821万ドル(約40億円)が私たちの機関に拠出された。日本の協力で、私たちの事業は成り立っている。

 子供の交流も盛んだ。11年の東日本大震災以降、ガザ地区岩手県釜石市の子供たちが被災地復興を願い、毎年合同でたこ揚げをしている。15年に国際NGO・日本リザルツがガザの子供たちを日本に招いてくれた際は、私も釜石市の子供たちと一緒にたこ揚げをした。

 安倍晋三首相は9月に国連で、難民問題を解決するため、総額28億ドル(約2900億円)規模の人道支援を表明した。私たちの事業を継続する上でも、日本の資本協力は必要不可欠である。日本でも難民支援の動きが高まりつつある中、日本の皆さんに三つの協力を依頼したい。

 1点目は、教育分野と保健分野で日本の技術を生かすことである。日本が発案した母子手帳が、全パレスチナ難民の妊産婦に配布されているのをご存じだろうか。パレスチナの病院は医療機器の老朽化が進んでおり、この分野で高い知見を持つ日本の更なる協力が不可欠だ。

 2点目は難民の自立を促す仕組みづくりだ。パレスチナ自治区は失業率が高く、特にガザ地区で深刻だ。14年のガザの失業率は43%に上り、若者の失業率は7割近くに達する。雇用の確保と自立支援は急務で、日本は技術や経営面で、多くのノウハウを持っている。日本の強みを生かし、若者の起業や雇用を促進する長期的な仕組みを構築したい。

 最後に、日本国内で関心を持ってもらう機会を増やすことも重要だ。当機関で青年大使を務めるガザ出身の歌手ムハンマド・アッサーフをモチーフにした映画「歌声にのった少年」が先月から日本でも公開され、多くの来場者でにぎわっているという。映画は現状を知ってもらう契機になる。日本の皆さんがパレスチナパレスチナ難民に興味を持ち、彼らの生活の質が向上するよう協力をしてくれる仲間が一人でも増えることを心から願っている。

 (Pierre Krahenbuhl 国連パレスチナ難民救済事業機関事務局長)

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    −−「私の視点 難民支援 パレスチナに関心持って ピエール・クレヘンビュール」、『朝日新聞』2016年10月22日(土)付。

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