覚え書:「著者に会いたい 西村雅彦の俳優入門―1カ月で効果が出るセリフのメソッド 西村雅彦さん [文]赤田康和」、『朝日新聞』2017年02月12日(日)付。

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著者に会いたい
西村雅彦の俳優入門―1カ月で効果が出るセリフのメソッド 西村雅彦さん
[文]赤田康和  [掲載]2017年02月12日

「俳優入門」の著者・西村雅彦さん=東京都世田谷区、関田航撮影
 
著者:西村雅彦  出版社:飛鳥新社

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■脳とも闘い、言葉を伝える

 ピンポン球を相手に渡しながら話しかける、言葉の冒頭を強く発音する——。リアルかつ自然に、対話するノウハウをつづった。俳優ではない人にも役立つ入門書だ。
 「現代では多くの人の会話はちゃんとした言葉のキャッチボールになっていないのではないか。相手の言葉を受け止めずに自分の話をしているだけとか。寂しいことです」
 ネット時代の今はメールやソーシャルメディアの送受信が多くなりがち。一方、人間関係は複雑化し、家族から会社の同僚、友人まで「他人」との関係に神経をすり減らす人は少なくない。本書は、そんな現代人が参考にできるノウハウが盛りだくさんだ。
 記者もピンポン球を使った会話を体験した。見えないはずの言葉が可視化され、しっかり届けようと意識できた。
 俳優というと「役作り」を思い描くが、重要なのはむしろ「言葉を伝えること」と話す。「余計な感情を注入すれば言葉が濁る」。感情をセリフにのせなくても肉体からしっかりセリフを発すれば、感情は客に伝わるというのだ。
 俳優なのに「あがり症」で緊張する自分と闘ってきた。「脳に『支配をやめろ』と言い続ける」という。その「やめろ」という指示も脳の営みだが、この人の中では、脳の上位に「意思」があり、その意思による肉体の制御を演技の中心に据えてきた。
 演じる役を超えて、理知と狂気とユーモアが漂う人である。そんな魅力も、脳との激しい闘いや身体の制御の末に生まれたのかもしれない。
 自らプロデュースもする舞台の全国公演が18日から始まる。演じるのは美術品専門の大泥棒という役。喜劇だからこそ精緻(せいち)に演じている。
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 飛鳥新社・1700円
    −−「著者に会いたい 西村雅彦の俳優入門―1カ月で効果が出るセリフのメソッド 西村雅彦さん [文]赤田康和」、『朝日新聞』2017年02月12日(日)付。

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