覚え書:「絶滅の地球誌 [著]澤野雅樹 [評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2017年02月12日(日)付。

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絶滅の地球誌 [著]澤野雅樹
[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)  [掲載]2017年02月12日   [ジャンル]社会 

 絶滅の到来を人類は早めるか、遅らせられるか。それが本書のテーマだ。
 大規模噴火でCO2が増えて多くの生物種が絶滅した太古の歴史を紹介しつつ著者はCO2を大量放出する現代文明の行く末をまず予想してみせる。とはいえ化石燃料原子力に替えれば済む話でもない。平和利用の建前で広まった核技術は核武装の可能性をあらゆる場に開き、大国間の相互核抑止体制を無効化する。
 こうして、いずれを選んでも絶滅時計の針を進めるのに私たちは「化石燃料原子力か」の二択にこだわってきた。自らの行為が大量虐殺に繋(つな)がると思わなかったナチス時代の人々に対してアレントが用いた「短慮」の概念を引いて著者は現代社会を批判する。
 ならば3・11の災厄を経験した日本社会は今度こそ短慮を越え得たのか。地球大の自然科学的思考と、政治と技術の国際的知見を大胆に接続した本書は、読者が検証に用いる材料を様々に用意してくれている。 
    −−「絶滅の地球誌 [著]澤野雅樹 [評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2017年02月12日(日)付。

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