覚え書:「エマニュエル・トッド氏『介護・子育て、負担減らせ』 低出生率、日本に提言」、『毎日新聞』2016年12月5日(月)付。

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エマニュエル・トッド

「介護・子育て、負担減らせ」 低出生率、日本に提言

毎日新聞2016年12月5日 東京朝刊


 フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏が毎日新聞のインタビューに応じた。トッド氏は、日本の社会保障制度について、「家族に要求することが多すぎる」と指摘。それが低い出生率につながっているとの見方を示した上で、「日本が直面している最大の課題は人口減少。このままでは30〜40年後に突然、災いが訪れる」と警告する。

 トッド氏は1951年生まれ。人口統計や家族の類型化による国際政治の動向の分析が専門で、70年代には旧ソ連の崩壊、最近は英国の欧州連合(EU)脱退や米大統領選でのトランプ氏勝利を予見して注目されている。インタビューは11月下旬にパリ市内で行った。

 トッド氏は「親に対する子供の負担、子供に対する親の負担があまりに大きい」と述べ、介護や子育てが家族の負担になっている現状を問題視。「国がそれに代わるものを提供し、個人の問題から国の問題に変え、個人を解放しなければ出生率は上がらない」と指摘し、介護保険制度や保育制度が十分機能せず、出生率の低迷につながっているとの認識を示した。安倍政権は待機児童の解消や働き方改革に取り組んでいるが、トッド氏は「日本政府は何もやっていない」と切り捨てる。

 フランスは出生率が2・0を超え、先進国の中では少子化の克服に成功した数少ない国として知られる。トッド氏によると、子供のいる世帯への経済援助が手厚く、幼稚園から大学まで公教育について国が全額保障する政策を実施してきたことが、家族の負担を軽減し出生率向上をもたらしているという。これに対し、日本は国立大学まで多額の入学金や授業料がかかることをトッド氏は批判する。

 「日本にとっての脅威は人口減少と人口の老化。経済や科学技術ではなく、人口問題をもっと論じなければならない。意識の革命が必要だ」と訴えた。【野沢和弘】(インタビュー詳報は7日医療・福祉面に掲載します)
    −−「エマニュエル・トッド氏『介護・子育て、負担減らせ』 低出生率、日本に提言」、『毎日新聞』2016年12月5日(月)付。

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エマニュエル・トッド氏:「介護・子育て、負担減らせ」 低出生率、日本に提言 - 毎日新聞



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