覚え書:「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年03月19日(日)付。
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文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!
池上冬樹が薦める文庫この新刊!
2017年04月02日
(1)『ゴーストマン 時限紙幣』 ロジャー・ホッブズ著 田口俊樹訳 文春文庫 1058円
(2)『冬の灯台が語るとき』 ヨハン・テオリン著 三角和代訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1274円
(3)『ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台』 三上延著 メディアワークス文庫 702円
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(1)は、48時間後に爆発する“時限紙幣”を犯罪の後始末のプロが追跡する犯罪小説。過去と現在を並行させる巧みな展開、迫力にみちた銃撃戦、緻密(ちみつ)な強奪計画と実行と申し分ない。複数の陰謀が絡み合い、沸点を目指していく興趣も抜群。スタイリッシュでクールすぎるのが逆に鼻につくほどの若き才人のデビュー作。昨年28歳で急逝した。
(2)は、現代ミステリーを牽引(けんいん)する北欧小説の一冊。傾向として挑発的で野蛮で力強い作品が多いが、テオリンは静謐(せいひつ)感ただよう正統派。中盤まで事件らしい事件が起きなくてもじっくりと読ませ、しみじみとした味わいをもつ。
(3)は、古書をめぐるシリーズの完結編で、今回は初の洋書、それもシェークスピア。当時の演劇や出版状況などを詳細に語りながら、同時に栞(しおり)子の家族の秘密(母親との冷めた関係。母と祖父の確執。祖父が張りめぐらした罠〈わな〉)も解きあかしていく。人生と古書の縁を繊細にリリカルに捉えた名連作。番外編でもスピンオフでもいいから続けてほしいものだ。
−−「文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊! 池上冬樹が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年03月19日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017040200003.html