覚え書:「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年04月09日(日)付。
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文庫この新刊!> 池澤春菜が薦める文庫この新刊!
池澤春菜が薦める文庫この新刊!
2017年04月09日
(1)『風の名前1』 パトリック・ロスファス著 山形浩生ほか訳 ハヤカワ文庫 886円
(2)『マイルズの旅路』 L・M・ビジョルド著 小木曽絢子訳 創元SF文庫 1404円
(3)『天体嗜好症 一千一秒物語』 稲垣足穂著 河出文庫 1296円
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今月は長い物語の終わりと始まり、そして時を超えて愛される物語を。
(1)は話題沸騰のファンタジー長編の第1巻。一気呵成(いっきかせい)に読み終えてはたと気づいたのだが、1巻の時点ではほぼ宿屋の亭主が生い立ちを語っているだけだ。なのにこれだけ読ませてしまう筆のうまさ!今後どれだけ面白くなることか。読み始めるなら、今!
(2)は現時点で16巻から生(な)るヴォルコシガン・サガのクライマックス。なので未読の方は第1巻『戦士志願』から読んで欲しい、と言う甚だ横紙破りな書評になってしまうが、このシリーズにはそれだけの価値がある。障害を持って生まれ、口八丁で宇宙を股にかけ飛び回るマイルズの冒険をぜひ。
(3)は全ての文、全ての言葉が美しいタルホ文学の精髄。揺るぎない美学に裏打ちされた、唯一無二の世界は月光から醸造した酒のように私たちを酔わせる。ただし相当強いので、一気読みせず、一日一編ずつ嘗(な)めるように読むことをお勧めします。
−−「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年04月09日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017040900008.html