覚え書:「さあこれからだ /135 子どもの命支えるチョコ募金=鎌田實」、『毎日新聞』2016年12月18日(日)付。

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さあこれからだ

/135 子どもの命支えるチョコ募金=鎌田實

毎日新聞2016年12月18日 東京朝刊

オピニオン
コラム
紙面掲載記事

イマーンちゃんと=2015年1月撮影
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 イラク北部、チグリス川に沿って広がるイラク第2の都市モスル。過激派組織「イスラム国」(IS)から奪還するため、10月から総攻撃が行われている。

 奪還作戦は、ISの激しい抵抗により一進一退であるが、モスルの東半分をおおむね奪還した。しかし、もともとISの拠点はモスルの西側にあり、仕掛け爆弾や狙撃、自爆テロなどが繰り返され、てこずっている。イラク政府側は今年いっぱいで奪還したいようだが、地元ではまだ3カ月以上かかるのではないかとうわさされている。

 戦闘を逃れて、モスルから脱出してきた避難民も多い。ぼくが代表をしている認定NPO法人のJCFとJIM−NETは、シリアからの難民だけでなく、イラク国内避難民の支援にも取り組んできた。

 モスルからの避難民が殺到するハムダニアチェックポイントでは、保健省の手を借りて、水やミルク、食料などを緊急支援として毎日配布している。また、避難民キャンプに、移動診察車のモバイルクリニックで、医療面のサポートもしている。


16年12月にモスルから脱出してきた少女に緊急支援物資を渡した
 こうした戦乱のなかで、病気を抱えた子どもたちの治療も、重要な支援だ。JIM−NETでは8年前、モスルから約80キロ離れたアルビルに拠点を置き、イラク小児がんの子どもたちの医療支援を続けてきた。

 イマーンちゃん(11歳)と出会ったのは3年前。難治性の白血病で、骨髄移植をしないと助からない。幸いにもイラク政府のプログラムで、インドで移植を受けることができた。しかし、途中で政府の資金が滞り、後が続かなかった。

 ぼくはイマーンちゃんの家を訪ねて事情を聴いた。JIM−NETが資金を負担し、イマーンちゃんをフォローアップのためにインドへ連れていった。

 ところが、そのイマーンちゃんと突然、連絡が取れなくなった。ヨーロッパに行ったのではないかといううわさを聞いた。フェイスブックで調べてみると、ドイツに移住したことがわかった。トルコから海を渡り、ギリシャ経由でドイツにたどり着いたという。

 今年4月、スタッフがドイツまで会いに行った。11歳にしては小柄な体で、何度も命の危機に遭いながらも、変わらずちゃめっ気たっぷりで、すっかりドイツの生活になじんでいたという。

 JIM−NETではこうした子どもたちを救うために、毎年、チョコ募金を実施している。2000円の寄付で、チョコレート(4個1セット)をプレゼントする。


チューリップの缶がイマーンちゃんの作品
 イマーンちゃんが描いたチューリップの絵は、今年のチョコレートの缶にプリントされている。そのほか難民・避難民となったシリアやイラクの子どもたちが美しい花の絵をかいてくれている。

 やむなくヨーロッパへ脱出した子どもたちがいる一方で、イラク国内に残り闘病を続ける子どもたちもいる。地方からアルビルの小児がん病院に来て、治療を受ける子どものために、病院の隣に、親子が寝泊まりできるサポートハウスをつくる予定である。お金もなく、病院の待合室などで寝泊まりする親子を支えたいと思っている。

 チョコ募金のチョコレートは北海道帯広市六花亭が材料費のみで協力してくれている。

 子どもたちの命を支えるためにもぜひ、チョコ募金に協力してください。

 申し込みは03・3209・0051(平日午前10時〜午後4時)。またはホームページhttp://jim−net.orgから。チョコレートは16万個を準備し、なくなり次第終了します。(医師・作家、題字も)=次回は来年1月15日に掲載

    −−「さあこれからだ /135 子どもの命支えるチョコ募金=鎌田實」、『毎日新聞』2016年12月18日(日)付。

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