覚え書:「問う『共謀罪』 表現者から 心の内、絶えず監視される社会に 周防正行さん」、『朝日新聞』2017年04月19日(水)付。

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問う「共謀罪」 表現者から 心の内、絶えず監視される社会に 周防正行さん
2017年4月19日

周防正行さん=相場郁朗撮影
 ■映画監督・周防正行さん(60)

 自由を奪われることで社会は安全になるのだろうか

    ◇

 冤罪(えんざい)をテーマにした映画を撮影したことがきっかけで、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件が2010年に発覚した後、刑事司法制度の改革を議論するための国の会議の一員になった。警察官や検察官、裁判官と話して感じたのは、法律とは怖いもので、解釈と運用により、どうにでも使われてしまうことだ。

 今回の法案は解釈の幅が広い。政府は否定するだろうが、権力に都合の悪い主張をする人を立件する武器を手に入れることになる。時の政権に声を上げることがはばかられる社会になるだろう。表現をする立場には確実に影響が出る。

 権力は、新設する罪を使って有罪にしなくてもいい。「話を少し聞きたい」と任意の捜査をするだけで、萎縮効果は抜群だ。「私たちが何を考えているのか」を国家が絶えず監視する社会になる。政府は「一般人は対象ではない」とも言う。では、そもそも「一般人」とはどんな人か。誰でも犯罪をする可能性があり、誰でも「犯罪をした」と疑われる可能性がある。

 捜査機関に対しては裁判官がチェックするシステムだと政府は言う。だが、裁判官は人権を守る最後の砦(とりで)ではなく、国家権力を守る最後の砦と化している。権力が新たな制度をつくろうとするとき、私たちは声をあげ、抑制をかけなければならない。民主主義の成熟度が問われている。

 (聞き手・金子元希)

    *

 すお・まさゆき 主な作品に「Shall we ダンス?」や痴漢冤罪事件を題材とした「それでもボクはやってない」など。

 ◇刑事司法のあり方を大きく変える「共謀罪」の新設で「表現の自由」は守られるか。創作に携わる人たちに聞く。
    −−「問う『共謀罪』 表現者から 心の内、絶えず監視される社会に 周防正行さん」、『朝日新聞』2017年04月19日(水)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12898580.html


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