覚え書:「問う「共謀罪」 表現者から 監視で犯罪「予防」、歯止め失う 平野啓一郎さん」、『朝日新聞』2017年4月21日(金)付。

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問う「共謀罪」 表現者から 監視で犯罪「予防」、歯止め失う 平野啓一郎さん
2017年4月21日

平野啓一郎さん=山本裕之撮影

平野啓一郎さん=山本裕之撮影
 ■作家 平野啓一郎さん(41)

 こんなことを言ったら警察に目を付けられるかも、と気にする社会でいいのか。

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 テロを未然に防ぐべきだとの意見に多くの賛意が集まるのは理解できる。ただ、そのための法律は既にあり、「共謀罪」は必要ない。

 フェイスブックなどのSNSが発達した今、「友達の友達」は時にとんでもないところまでつながっていく。犯罪を漠然としたリスクとして「予防」しようとすると、捜査機関の監視は歯止めがなくなる。「法に違反しないように」ではなく「監視すべき人間と見なされないように」と、日常的に意識しなければならなくなる。国民は萎縮し、社会の活力がそがれるだろう。

 本には人と人とを結びつける作用がある。小説を書く時は色々な人に取材するし、ぼくの本が誰かの何かの原動力になることもある。それが政府に批判的な運動かもしれない。本を書く限り、いつ自分が関わるかわからない点に懸念を感じる。

 紛争地を取材する通信社記者をヒロインにした「マチネの終わりに」を執筆した際、過激派組織「イスラム国」(IS)に殺害されたジャーナリスト後藤健二さんに話を聞いた。事実を伝えるために命がけで現地へ赴く人だった。民主主義を健全に機能させるには、事実に基づき判断をしなくてはならない。監視が強まり、政府に都合のいい発表だけが伝われば戦中の日本のように道を誤る。取材活動の自由が保障されるかも危惧する。(聞き手・山本亮介)

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 ひらの・けいいちろう 京都大学在学中、デビュー作「日蝕」で芥川賞。「決壊」「ドーン」「空白を満たしなさい」など。
    −−「問う「共謀罪」 表現者から 監視で犯罪「予防」、歯止め失う 平野啓一郎さん」、『朝日新聞』2017年4月21日(金)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12902125.html





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