覚え書:「中世戦国期の城がアツイ!! 素朴で実用本位の姿、人気」、『朝日新聞』2017年06月26日(月)付。

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中世戦国期の城がアツイ!! 素朴で実用本位の姿、人気
2017年6月26日

復元された箕輪城の郭馬出西虎口門=群馬県高崎市
 
 お城というと、白壁に石垣――というイメージを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。だが、あれは近世に特徴的な姿。中世〜戦国期の城館は、板塀や木柵に囲まれ、木造の櫓(やぐら)などを構えた実用本位のものだった。そんな城が今、城好きの人気を集めている。

 群馬県高崎市の中心部から車で約30分の国史跡、箕輪(みのわ)城。上杉家に仕えた武将・長野業政(なりまさ)の築城で、その後、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」にも登場する徳川四天王の1人・井伊直政が居城としたことで知られる。だが、1598年に直政が高崎城を築いたのを機に廃城になった。

 ■復元、整備各地で

 そんな同城の整備が始まったのは6年前だ。昨秋には高崎市によって、城の象徴ともいえる「郭馬出西虎口門(かくうまだしにしこぐちもん)」が完成した。

 2階建ての櫓門で、幅5・7メートル、奥行き3・5メートル、高さ6・5メートル。杉やケヤキを使い、発掘で確認された礎石の位置に基づき、現存する古い城門や絵図などを参考に再現された。戦国期の関東の城門としては最大級。工費は約9千万円だが、見慣れた「お城の門」とは異なる素朴な趣だ。

 市教委文化財保護課の秋本太郎さんは「箕輪城は廃城後、一切、手が加わっていない。戦国期の城郭の姿がよくわかる貴重な実例」と語る。今後、本丸などの整備を進める方針という。

 江戸東京博物館の斎藤慎一学芸員(日本中世史)によると、中世〜戦国期の城館などの復元は1970年代に本格的発掘が始まった福井市一乗谷朝倉氏遺跡の整備を皮切りに全国各地で行われるようになった。

 そんな草分けの一つが、青森県八戸市にある根城(ねじょう)だ。14世紀に南部氏が築き、約300年使われた中世〜戦国期の城で、11年かけて整備され、「史跡 根城の広場」として94年から公開されている。

 ■外国からも見学

 今再現されているのは戦国時代末期の姿だ。最初に目に飛び込んでくるのが木製の城門と城柵。内部には当主が来客と会ったり儀式を行ったりした主殿や馬屋、納屋、鍛冶(かじ)工房などが実物大の馬や人の人形を使い、当時の暮らしぶりのままに復元されている。城というより、地方領主の館といったイメージだろうか。

 「日本100名城の一つでもあり、わざわざ見に来る外国の方も多い」と管理にあたる八戸市博物館。年間2万人が訪れるという。

 一方、戦いに備えていた城の様子がよくわかるのが、茨城県坂東市の逆井(さかさい)城。小田原城(神奈川県)を居城にしていた北条氏が1577年に築城。豊臣秀吉の小田原攻めに伴って90年に廃城となった。

 門などの整備は1986年から始まり、櫓門、二層櫓、井楼(せいろう)矢倉などが復元されている。中でも井楼矢倉は敵をいち早く見つける物見のための施設とあって、高さも約12メートル。最上部には盾が備え付けられるなど細部まで凝った造りだ。「圏央道が開通して、県外から来る方が増えました」と市教委生涯学習課。

 このほか、北条氏が築いた八王子城(東京都八王子市)、同氏ゆかりの鉢形城(埼玉県寄居町)、河野氏ゆかりの湯築(ゆづき)城(松山市)、足利幕府で実権を握った三好氏の勝瑞(しょうずい)城(徳島県藍住町)などが各地で整備され、強い存在感を放つ。

 ■アプリで俯瞰図

 専門のアプリも出た。パワーメディアの「ぽちっと東国の城」は、深大寺(じんだいじ)城(東京都調布市)など、東日本の戦国期の14城について、俯瞰(ふかん)図などを見ることができ、城巡りに便利だ。

 中世戦国期の城ブームについて、ある関係者は「近世城郭にないたたずまいにひかれ、訪れるコアなファンが多いようだ」と語る。

 斎藤さんは「近年復元された各地の城館には最新の研究成果が反映されており、見て感じる学習の場として大きな役割を担っている。ただ、個々の城は、本拠の城や連絡のための城など、それぞれ異なった目的で築かれた。そうした役割の違いが理解しやすい整備が大切だ」と指摘する。

 (編集委員・宮代栄一)
    −−「中世戦国期の城がアツイ!! 素朴で実用本位の姿、人気」、『朝日新聞』2017年06月26日(月)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S13004960.html



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