覚え書:「書評:本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著」、『東京新聞』2017年09月17日(日)付。

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本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著

2017年9月17日
 
◆にじみ出る人生、表現
[評者]荒俣宏=作家
 これは、読み上げた本に自身の「表現」と「人生」を絡ませた超書評だ。表現のほうは『完本 ジャコメッティ手帖(てちょう) 1』がすごい。よほど日本語離れした本なのか「マルデTwitterノヨウナメモ的ナ日記ヲ片仮名ト仏語デ語ル哲学者矢内原(以下Y)ハAlberto Giacomettiノモデルヲ5度ノ渡仏ヲ通シテ務メタ…」と書いていく。
 むろん、人生のほうは、さらに興味ぶかい。著者が何回もあったアンディ・ウォーホルに対しては、もはやウォーホル自身になり切って、「職業上の秘密」を暴露する。「ボクはアンディ・ウォーホル。芸術家になるために前歴のイラストレーターを闇に葬って、見事、芸術家になりすまして大成功した…」と、『アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし』なる絵本に触れつつ、「芸術って怖いだろ? まるでテロだよね」と結ぶ。
 藤田嗣治横山大観が描いた戦争画に関する本の書評も秀逸だ。「愛国画家として再登場を」計ろうとして失敗した国際派の藤田と、戦闘場面でなく「国家戦略の象徴に富士山を」描き戦後も画壇に返り咲いた国粋派の大観とを比較。著者は最後に(涙)と書いて、自身を含めた画家の人生を述懐する。難しくて上から目線の書評を蹴散らし、自由奔放な読み方なのに、書評の本道を外していない。選ばれた本を全部買いたくなるからだ。
 (光文社新書・907円)
<よこお・ただのり> 1936年生まれ。美術家。著書『言葉を離れる』など。
◆もう1冊 
 丹羽宇一郎著『死ぬほど読書』(幻冬舎新書)。ビジネス界きっての読書家が伝える、本の与える豊かな力。
    −−「書評:本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著」、『東京新聞』2017年09月17日(日)付。

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東京新聞:本を読むのが苦手な僕は こんなふうに本を読んできた 横尾忠則 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)








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本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた (光文社新書)
横尾 忠則
光文社 (2017-07-19)
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