覚え書:「特集ワイド 松田喬和のずばり聞きます 森裕子・参院議員」『毎日新聞』2017年06月29日(木)付夕刊。

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特集ワイド

松田喬和のずばり聞きます 森裕子参院議員

毎日新聞2017年6月29日 東京夕刊
=東京都千代田区永田町で26日

なりふり構わず全力で、批判を恐れず追及する
 森友、加計学園を巡る国会論戦では、自由党森裕子参院議員の鋭い追及が光った。「この国は法治国家なのに、どこでねじ曲げた」「虚偽答弁」などと畳み掛け、明確な説明を渋る安倍晋三政権を守勢に回らせた。「1強」に果敢に立ち向かった「論客」に松田喬和毎日新聞特別顧問が聞いた。【構成・庄司哲也、写真・根岸基弘】

民進党に熱あれば野党は本気で結集

松田喬和特別顧問
 −−「安倍1強」「自民1強」と言われてきましたが、それが崩れるのではという兆候も見えています。この要因をどのように見ていますか。
 森氏 私は現在、自由党に属しています。弱小・零細野党と言ってもいい。でも、私は選挙で選ばれた国民の代表です。それなのに安倍首相は、その国会議員をばかにしたような答弁や態度に終始しています。一向に質問に答えようとしない。森友問題では「自分と妻が関わっていたら辞める」と言い切った。加計問題では動かぬ証拠を突き付けましたが、安倍首相たちはいいかげんな答弁で切り抜けたと思っている。そのやり取りを見ていた国民は「首相はうそをついている」と見抜き、見下されているとの思いを抱いているのでは。そうした国民の怒りと「首相らはいつまでこんな答弁を続けるんだ」という私の怒りが合致したようです。今も全国から励ましの電話をいただいています。

 −−「安倍1強」を支えてきた内閣支持率が下落した一方、野党支持も伸びていない。欧米で起きている政治不信を招きかねません。

 森氏 野党支持が伸びないのは極めて単純な理由です。野党が本気で結集し、独裁政治の安倍政権に代わる国民の側に立った政治を行おうという気構えがないということを国民が分かっている。煮え切らない野党に対する失望です。この話をすると、大げさなことを言っていると怒られるんですが、今の政治状況で、国民が「まあ、しょうがない」と諦めてしまって政治に無関心になると、権力者にとって都合がいい状況ができあがってしまう。これでは大政翼賛会につながりかねません。

 −−「論客」といわれる人物が野党にいなくなった印象があります。政権を追及する時に心掛けていることはあるのでしょうか?

 森氏 私自身は論客といわれる能力を持ち合わせているとは思っていません。もし、そう見られているのならば、それは、野党第1党の民進党に批判を恐れず闘う姿勢がないからでしょう。政権転落から既に4年が経過しています。それなのに今でも安倍首相をはじめ与党からは「民主党政権の時は」との批判にさらされる。でも、それを気にする必要はありません。批判を恐れたら、この仕事はできません。あえて言うなら「格好をつけない」ということでしょうか。国会などの質疑の場では、「私は頭がいい」などとアピールする話し方ではなく、シンプルな言葉を使い、分かりやすく質問しています。後は、中学時代に合唱部の部長だった経験を生かしています。合唱と一緒で、同じスピードで話さないことです。

 −−民進党を軸とした野党間の連携は進むのでしょうか。

 森氏 支持者のみなさんからも同じ質問を受けます。そして同じ答えを返しています。実は肝心の「結集」という点が見えてこない。民進党がリーダーシップを発揮する状況になっていない、と。今回の通常国会でも野党は「共謀罪」法案の廃案を目指していたのに、民進党の行動は何をしたいのかが見えなかった。ただ、政治というのは一瞬にして動くことがあります。その動きを待っています。昨年の参院選で私が当選した新潟選挙区でも非常に厳しい戦いでしたが、野党が結集すれば勝ち抜くことができるのです。

 −−ずばり聞きます。その一瞬が起こる鍵とは?

 森氏 民進党の中に「こうしちゃいられない」という熱が生まれることです。本来であれば、彼らが国会でもっと政権をガンガン追及して、目立たなければなりません。でも、その熱がない。零細野党の私が目立つようではおかしいのです。

 −−民進党内に熱がないというが、その原因は?

 森氏 まだ野党になり切れていないからではないでしょうか。民進党が提案型などと言っているのが、私には全然理解できない。良い提案をしたところで、安倍政権にいいとこ取りをされるだけ。そもそも、野党の話なんか安倍政権はまともに聞いてはいません。そういう状況ですべきことは、政権のおごりや緩み、権力の暴走を野党として厳しくチェックすること。そこに全力を傾け、どんなに批判されてもいいからやり通す。それでこそ野党なんです。その点は、自民党が野党に転落したときはすごかった。民進党にはなりふり構わずというのが足りない。どこかで、それに気付くのではないかと期待しています。

 −−自民党支持者が、野党の主張を理解する変化も必要です。

 森氏 最近、ある全国大会に出席しました。ほぼ自民党支持者で占められ、野党議員が顔を出すのははばかられる状況で、私が紹介されると会場がざわついたほど。でも、帰り際には「森さん、頑張ってよ」と、参加者の人たちが堂々と握手や記念撮影を求めてきました。驚きましたが、安倍1強と言われても、異を唱える人を排除しようとする姿勢に「やっぱりおかしい」と考えている人は与党支持者内にもいるんです。

 −−2大政党制を訴えた小沢一郎共同代表と政治行動を共にされてきました。しかし、いまだに自民党と対抗できる政治体制になっていません。小沢氏に責任はありませんか。

 森氏 2012年7月、消費増税法案に反対し、小沢共同代表と一緒に民主党を離党したことは結果的には失敗でした。民主党は政権を取りましたが、ただ一人、政権のど真ん中で経験を積んだことがある小沢共同代表は、西松建設事件で政権交代直前に「俺のことはいいから」と身を引きました。でも、そうすべきではなかった。あの当時、民主党には他に党内の取りまとめができる人材がいなかったのですから。

 ■人物略歴

もり・ゆうこ
 1956年、新潟県生まれ。新潟大卒。同県横越町議を経て、2001年、参院選自由党公認で初当選。民主党自由党の「民由合併」によって民主党に移る。11年、野田佳彦政権で副文部科学相に就任。16年7月の参院選で、野党統一候補として立候補し、3期目の当選を果たした。著書に「検察の罠」(日本文芸社)。1男2女の母で、孫もいる。
    −−「特集ワイド 松田喬和のずばり聞きます 森裕子参院議員」『毎日新聞』2017年06月29日(木)付夕刊。

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