覚え書:「私にはいなかった祖父母の歴史 [著]イヴァン・ジャブロンカ [評者]円城塔 (作家)」、『朝日新聞』2017年09月24日(日)付。
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私にはいなかった祖父母の歴史 [著]イヴァン・ジャブロンカ
[評者]円城塔 (作家)
[掲載]2017年09月24日
著者は歴史家である。
ホロコーストで父方の祖父母を亡くしている。それは著者が生まれる前のできごとだから、亡くしたというより、もともといなかったという感覚がある。
祖父母といっても、高齢者ではない。二人は三十歳前後で、幼い子供たちを残して殺されたのだ。
著者は、職業的な歴史家として、その二人の歴史の調査をはじめる。
膨大な公文書をあさり、同時期に近隣にいたことが判明した人を訪ね、その親戚たちに話をききにいく。幸いにも、まだ寿命を保っている人々がある。生きていても語ることができない人々があり、死んでいるために語ることができない人々がある。
調査は、著者が祖父母の存在を呼び戻し、亡くし直す過程ともなる。調査は絶滅収容所で終わりを迎えることがわかっている。著者にも、彼らを収容所から助け出すことはかなわない。その存在をわずかに掘り起こし、失うことができるだけである。
−−「私にはいなかった祖父母の歴史 [著]イヴァン・ジャブロンカ [評者]円城塔 (作家)」、『朝日新聞』2017年09月24日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2017092400011.html
私にはいなかった祖父母の歴史—ある調査—
posted with amazlet at 17.11.08