覚え書:「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年11月26日(日)付。
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文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!
文庫この新刊!
辻山良雄が薦める文庫この新刊!
2017年11月26日
(1)『食卓一期一会』 長田弘著 ハルキ文庫 734円
(2)『キムラ食堂のメニュー』 木村衣有子著 中公文庫 778円
(3)『人間をお休みしてヤギになってみた結果』 トーマス・トウェイツ著 新潮文庫 1015円
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(1)食べる営みは日々自然に行われる行為だが、その一つ一つは替えの効かないその場限りのものである。詩人は食卓という場に詩を発見し、自らの「言葉の一番ダシ」で、その光景をすくいとる。アップルバター、ポトフ、天丼、カレー……。ことばにより供された食事は、味や色、においや温かさで満ちあふれ、生きる歓(よろこ)びが瞬時によみがえる。
(2)そうした食の場は、自分の周りを見渡せばすぐに発見できる。家の台所、近所の畑、お気に入りの食堂や喫茶店……。食材や料理を作る人と話すなかで、著者は心に残ったことばを綴(つづ)り、それを反芻(はんすう)する。もっと食べることを味わいたい。読めば自分の食と向き合わざるをえない本。
(3)〈人間なんて休んでしまい、動物になりたい〉というふとした思いを、実際に行動に移したドキュメント。人工の前脚を着用しヤギの群れに混じり、脳にショックを与え、ヤギ的心理状態に近づいてみる。あきれてしまうが、その真っすぐな心情に不覚にも胸を打たれる、爽快な一冊。
(書店「Title」店主)
−−「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年11月26日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017112600003.html
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