覚え書:「皇帝と拳銃と [著]倉知淳 [評者]末國善己(文芸評論家)」、『朝日新聞』2017年12月17日(日)付。

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皇帝と拳銃と [著]倉知淳
[評者]末國善己(文芸評論家)
[掲載]2017年12月17日

 ドラマ「刑事コロンボ」のように、犯人が殺人を実行し、探偵役が完璧に見える犯罪計画のミスを暴くのが倒叙ミステリーである。
 狡猾(こうかつ)な犯人と死神のような乙姫警部が頭脳戦を繰り広げる本書は、著者初の倒叙ものの連作集である。
 「運命の銀輪」は、偶然にも助けられた犯行が、乙姫の指摘する蟻(あり)の一穴から崩壊していくところが面白い。大学教授が、恐喝してきた男を錬(ね)りに錬った計画で殺す表題作は、犯人の作った何重もの防壁を突き崩す乙姫の推理が圧巻だ。叔父を殺害した小劇団の主宰者が、恋人の女優にアリバイ工作を頼む「恋人たちの汀」は、現場に残された証拠と犯人を結び付けていく論理展開が鮮やかである。
 本書は倒叙ものながら、動機、犯行方法など計画の一部が隠されている。これが謎解きをより興味深くしているのも間違いない。
 「刑事コロンボ」へのオマージュと思えるエピソードが随所にあり、コロンボのファンはより楽しめる。
    −−「皇帝と拳銃と [著]倉知淳 [評者]末國善己(文芸評論家)」、『朝日新聞』2017年12月17日(日)付。

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皇帝と拳銃と
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倉知 淳
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