日記:人を楽しませたりびっくりさせたりする体験が「まじめな歴史」の領域に変化を引き起こしている

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 歴史はふつう、贅沢品ではなく必需品を求めての長い闘いとして語られる。自由、平等、安全、自立を求める闘争だ。しかし楽しみの歴史も重要である。なぜなら、これらの一見くだらない発見の多くが。最終的に「まじめな歴史」の領域に変化を引き起こしているからだ。私はこの現象を「ハチドリ効果」と呼んでいる。ある分野のイノベーションが、関係ないように思える分野で動きの変化を引き起こすプロセスである。コーヒー好きが現代の報道機関を生み出すのに一役買い、少数の優美に飾られた織物店が産業革命を促した。人を楽しませたりびっくりさせたりする体験を人間がつくり出して共有するときのほうが、人々が効用を求める関心事に注意を集中しているときより、劇的に社会を変革することが多い。現代世界は、たとえば内燃機関をつくる方法や、ワクチンを大量に製造する方法など、高尚な問題を解決しようと粘り強く努力した人々に負うところが大きい。しかし近代的なものには、別の種類の活動、すなわち手品やおもちゃやゲームなど、一見ふまじめな気晴らしで戯れることに端を発しているものが、驚くほどたくさんある。「必要は発明の母である」という古いことわざは誰でも知っているが、現代世界のとくに重要な考えや制度の実父確定テストをしたら、レジャーと遊びもその誕生に関与していることが必ずわかるだろう。
    −−スティーブン・ジョンソン(大田直子訳)『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語 新・人類進化史』朝日新聞出版、2017年、28頁。

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