覚え書:「私の視点 国連特別報告者 人権、“友人”として提言 藤田早苗」、『朝日新聞』2017年09月21日(木)付。

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私の視点 国連特別報告者 人権、“友人”として提言 藤田早苗
2017年9月21日
 
藤田早苗さん
 「資源の無駄遣いだ」。2014年、国連の自由権規約の審査で議長は勧告に従おうとしない日本に痛烈な批判を述べた。筆者はこの17年間、人権関連の会議を傍聴し続け、近年日本に対する懸念の高まりを痛感する。15年の国連特別報告者デービッド・ケイ氏の調査訪日が日本政府の都合でキャンセルになった時も「独裁国家のようだ」と人権関係者に呆(あき)れられた。

 日本政府は、国連特別報告者のケイ氏(表現の自由)の日本調査報告書と、ジョセフ・カナタチ氏(プライバシーの権利)の「共謀罪」に関する書簡に対し、強い不満を示す。5月の閣議決定で「個人の資格で述べられるもので、国際連合またはその機関である人権理事会としての見解ではないと認識している」という見解を示した。

 特別報告者は日本を含めた人権理事会から任命され、発言は権威、地位、正当性を持つ。勧告は国際人権基準に基づき、基盤のない個人的な意見ではない。

 日本は昨年の国連人権理事会理事国選挙で「国連人権高等弁務官事務所や特別手続きの役割を重視。特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、しっかりと協力していく」と宣言。「ハンセン病に関する特別報告者」の設置に関する貢献もアピール。勧告への懐疑的な態度は、これらの姿勢とも矛盾する。

 筆者は両氏とやりとりを続けてきたが、カナタチ氏は「国連特別報告者は、“友人”のような立場。ある人が危険なことをして傷つきそうなとき警告する“必要な時は批判もする友人(critical friend)”という意味だ。それに日本は強く抗議したが、15年に捜査権限法案を批判された英国は、独立の監視委員会設置などで修正。今年、電子メールプライバシー法案で勧告された米国は、抗議はせず対話し、調査訪問を受け入れた」と指摘する。

 日本は国連人権規約の締約国として人権保障の義務がある。国益に沿う分野を重視しながら、気に入らないものは無視や抵抗、抗議するのは、国連の人権制度を認めないに等しいと受け取られ、理事国の適性評価にも影響するだろう。

 “友人”からの耳の痛い提言への真摯(しんし)な対応や行動の成熟度が、国際社会での評価にもつながる。

 (ふじたさなえ 英国エセックス大学人権センターフェロー)
    −−「私の視点 国連特別報告者 人権、“友人”として提言 藤田早苗」、『朝日新聞』2017年09月21日(木)付。

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