覚え書:「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年03月04日(日)付。


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文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!

文庫この新刊!
池澤春菜が薦める文庫この新刊!
2018年03月04日

 (1)『アルテミス』(上・下) アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 ハヤカワ文庫SF 各691円
 (2)『そしてミランダを殺す』 ピーター・スワンソン著 務台夏子訳 創元推理文庫 1188円
 (3)『トラットリア・ラファーノ』 上田早夕里著 ハルキ文庫 626円
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 (1)デビュー作「火星の人」が話題となり邦題「オデッセイ」として映画化もされた著者の2作目は、月が舞台。元気で機転が利いて可愛らしい女の子の一人称、ジェットコースターな展開、しっかりとした科学考証と舞台設定、この作者ならではのユーモアの効いた文体で、今作も読み始めたら止まらない。
 (2)のミステリーも、大変なページターナー。空港で見知らぬ男女が出会ったことから動き出す殺人計画。殺すものと殺されるもの、追うものと追われるもの、4人の男女のモノローグで進められる物語は何度も裏返り、思いも寄らない展開へ。悪女リリーが最高に魅力的。
 おいしく楽しく読めて、心が温まり、おなかがすく(3)。3人兄妹で営むトラットリア、そこにお客としてやってきたかつての級友。心を込めた料理が導く、あたたかな結末。SFや重厚な作品の多い著者の、さらりと軽い、でもさすがの味付けの一皿。花束のようなデザート、ズッパ・イングレーゼを食べてみたい。
 (声優・コラムニスト)
    −−「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年03月04日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2018030400007.html




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