覚え書:「詩歌の森へ 高浜虚子の戦争観=酒井佐忠」、『毎日新聞』2017年09月04日(月)付。


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詩歌の森へ
高浜虚子の戦争観=酒井佐忠

毎日新聞2017年9月4日 東京朝刊

 高浜虚子の研究で知られる俳人、本井英が主宰する俳誌「夏潮」が創刊10周年を迎えた。このところ本井は、句集『開落去来』や評論『虚子散文の世界へ』を刊行するなど、旺盛な執筆活動をしている。また、毎年夏に出される「別冊虚子研究号」が興味深い。近代の大俳人である虚子の作品のみならず、思想や死生観などもふくめた全体像に新たな視点で挑む評論を、他の俳人からも集めて今夏で第7号となる。

 本井はここで、虚子の俳誌「ホトトギス」の選句による雑詠欄や「戦地より其(その)他」という記事に注目し、その作品を分析している。今回は、1939年から太平洋戦争が始まる41年12月までが対象だ。<秋白く足切断とわらへりき>(長谷川素逝)など傷病兵の句、<炎天の機翼の下の椰子(やし)樹海>(西山胡鬼)など航空機から「写生」した句が挙げられる。また、戦地で詠まれた句が、雑詠欄で連続して巻頭に選ばれているケースもあった。

 太平洋戦争の本格開戦前の時期だが、「戦いの日々を虚子は安閑と『銃後』で『花鳥』に遊んでいるばかりではなかったことが確認できた。つまり積極的に戦地の俳句を募り、それらの句を『選句』するという真剣勝負を通して、それらの句に自らの心を寄り添わせていたに違いない」との、本井の結論に注目したい。来夏は、戦争最中(さなか)のホトトギス俳句の検証だ。(文芸ジャーナリスト)
    −−「詩歌の森へ 高浜虚子の戦争観=酒井佐忠」、『毎日新聞』2017年09月04日(月)付。

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