日記:たがいの利益のために資源や親切な行動をやり取りしてお返しをする習慣


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 贈り物をする動物はカラスだけでない。似たような行動は、これまでに、昆虫、クモ、魚、鳥、哺乳類などの種のメンバーどうしで目撃されている。何かを贈る行動がいちばんよく見られるのは、つがいの相手あるいは候補者に対してだ。これは「婚姻ギフト」と呼ばれ、食べ物に始まり、食べられない記念品まである。ジェンツーペンギンのオスは、求愛のぎ式でメスに小石をプレゼントする。それほど多くはないが、群れのほかのメンバーに贈り物をする動物もたまにいる。イルカがウナギやイカ、タコ、魚を人間にプレゼントしたという報告はかぞえきれない。飼っている猫がネズミや小鳥、ヘビの死骸などの贈り物を置いていくと話す人はたくさんいる。
 たがいの利益のために資源や親切な行動をやり取りしてお返しをする習慣は、進化的適応で、とくに社会性動物では、個体が生き残るチャンスを増やすことにつながる。人間が救いの手を指しのべたり、贈り物を交換したり、友だちを招いて食事をしたりして絆を深めるのと同じことが、動物でも行われているのだ。つまり贈り物は、人間の文化的な伝統にとどまらず、もっと奥深いもので、この太古からあるお返しの行動こそが、私たちを自然というもっと大きい存在と結びつけているのだ。
    −−ベリンダ・レシオ(中尾ゆかり訳)『数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ 動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語』NHK出版、2017年、41−42頁。

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