覚え書:「書評:コンゴ共和国 マルミミゾウとホタルの行き交う森から 西原智昭 著」、『東京新聞』2018年02月18日(日)付。

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コンゴ共和国 マルミミゾウとホタルの行き交う森から 西原智昭 著

2018年2月18日
 
◆日本が知るべきこと
[評者]桜木奈央子=フォトグラファー
 アフリカの野生動物をめぐる諸問題が、私たちにとって決して無縁ではないことがわかる一冊だ。日本人が、絶滅に瀕(ひん)しているマルミミゾウの象牙利用に深く関わっていること、ペットとして人気が高い鳥であるヨウムの絶滅に拍車をかけている可能性があることを、私たちはどこまで知っているだろうか。

 二十五年以上にわたりアフリカ中央部で野生生物の研究や環境保全に携わってきた著者は本書で、熱帯林地域の悲惨な実情を詳細に伝えている。「ぼくは日本人であるからこそ、それを日本に住む人たちに知らせていく責務がある」という言葉には現状への憂慮が溢(あふ)れている。

 熱帯林の豊かな自然や森の先住民「ピグミー」の死生観についての記述からは、人間は自然の一部であること、その自然との共生について考えさせられる。しかし現在、先住民たちは定住化と貨幣経済の浸透で現金が必要になり、森で暮らすことは少なくなった。そして森林伐採によって原生林は失われ、そこに住む野生動物の数も減少しているという。

 伐採したアフリカ熱帯材の輸出先として、日本は世界でトップクラスだという。私たちにできるのは、まずはその現実を知ることだ。「遠い」アフリカではなく、同じ世界に生きる人間として、消えつつある自然や人々の暮らしに思いを馳(は)せる想像力が必要ではないだろうか。

現代書館・2376円)

<にしはら・ともあき> アフリカ日本協議会理事。訳書『知られざる森のゾウ』。

◆もう1冊
 内田道雄著『燃える森に生きる』(新泉社)。製紙用材や植物油脂のために森の破壊が進むスマトラ島の現状をルポ。
    −−「書評:コンゴ共和国 マルミミゾウとホタルの行き交う森から 西原智昭 著」、『東京新聞』2018年02月18日(日)付。

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