覚え書:「宗教改革500年、分断世界に光 カトリック教会・ルーテル教会、共同で行事」、『朝日新聞』2017年10月28日(土)付。

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宗教改革500年、分断世界に光 カトリック教会・ルーテル教会、共同で行事
2017年10月28日
 
写真・図版
マルティン・ルター肖像画 <メトロポリタン美術館蔵>
 今年は宗教改革の開始から500年。31日がちょうどその日だ。長い対立の歴史を超えて、ローマ・カトリック教会プロテスタントルーテル教会ルター派)は共同で記念行事を開く。立場の異なる者の間の分断が世界各地で広がるなか、和解への道はあり得ることを示す一筋の光のようだ。

 ドイツでは16世紀、カトリック教会が贖宥状(しょくゆうじょう)(いわゆる免罪符)を売り出し、手にすれば罪を償うことが免除されると唱えていた。それに対して司祭マルティン・ルター肖像画=が疑問を呈したのを機に教会は分裂、プロテスタント諸派が生まれることになる。

 自らの正当性ばかりを互いに主張する状況は400年以上続いた。大きな転機をもたらしたのは1962〜65年の第2バチカン公会議カトリックの司教らが集まる会議で、キリスト教徒が再び一つになれるよう方向転換したのだ。

 カトリック教会とルーテル教会は、歴史の検証と神学的な不一致をめぐる対話を始めた。それでも約50年の歳月が必要だった。「争いから交わりへ」という共同文書に実を結んだのは2013年のことだ。

 違いを見つけるのはたやすいが、むしろ一致点に注目しよう――。その姿勢は「対立」「分断」を超えようとするうえで普遍的な教訓となりそうだ。

 宗教改革500年は「お祝い」ではない。組織は別のままで、宗教儀礼の違いもある。そんな現実はそれぞれの「痛み」。節目の年ではあるが、いまも一致へ向かう途上という位置づけなのだ。

 日本の両教会は11月23日に、長崎市カトリック浦上教会で記念礼拝を行う。キリシタン弾圧や原爆投下などの受難の地から、平和を希求するメッセージを発信することにした。

 カトリック中央協議会の宮下良平事務局長はこう語る。「人々はいとも簡単に分断されてしまう。しかし分断したものがよりを戻すためには、本当にコツコツと作業をするしかありません。カトリック教会とルーテル教会の歩みはその証しです」

 異なる宗教の対話の問題に詳しい大正大学の星川啓慈教授(宗教哲学)は次のように述べる。「他の宗教に対する排他性は、信仰者のアイデンティティーに関わるために根深く、『寛容であらねば』という思想とは矛盾する側面があります。しかし両教会がそこを実践のなかで本当に乗り越えていくことができれば、宗教界にとどまらず、広く社会に示唆的な意味を持ち得るでしょう」(磯村健太郎
    −−「宗教改革500年、分断世界に光 カトリック教会・ルーテル教会、共同で行事」、『朝日新聞』2017年10月28日(土)付。

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