日記:強行採決から1年!戦争法廃止!9.19国会正門前行動=学者の会

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強行採決から1年!戦争法廃止!9.19国会正門前行動 | 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動





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覚え書:「裸の華 [著]桜木紫乃 [評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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裸の華 [著]桜木紫乃
[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]文芸 

 踊り一筋のストリッパーが骨折して舞台を降り、四〇歳で故郷札幌に戻って、ススキノで店を開く。従業員はわけありのバーテンダーと、性格のまるで違う新人ダンサー二人。どこまで演歌な話になるかと思いきや、なんだこの潔さ。
 それぞれに秘密や過去はあるけれど、足の引っぱり合いや謀略はない、すっきりした職場の人間関係。店長ノリカの経営努力や、彼女が師匠と仰ぐ先輩たちの金言も、具体的で建設的。人材養成にも余念がなく、若い二人の踊り子たちは、店をきっかけにそれぞれ将来を見いだしていく。あっけにとられるほど率直に語られる恋や性欲は清々(すがすが)しい。
 水商売の世界を描く小説は日本文学に数多いが、これはかなりの変わり種。真面目に働く女たちと、その仕事を各方面から誠心支える裏方の男たちの話なのだ。この設定、やはり女性作家ならでは、また北海道の作家ならではかもしれない。幸田文『流れる』を思い出し、そんなことも考えた。
    −−「裸の華 [著]桜木紫乃 [評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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北のバーの潔い人間模様|好書好日



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裸の華
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桜木 紫乃
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覚え書:「ボクシングと大東亜―東洋選手権と戦後アジア外交 [著]乗松優 [評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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ボクシングと大東亜―東洋選手権と戦後アジア外交 [著]乗松優
[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]歴史 人文 
 
■「熱狂」が崩した国交断絶の壁

 第2次大戦後、フィリピンの対日感情は極めて悪く、2国間の交渉は難航した。だが、国交断絶中の1952年からボクシング東洋選手権が始まり、日本人とフィリピン人選手の王座決定戦が両国のファンを熱狂させる。54年には日本政府の賠償交渉に一切応じなかったフィリピンのマグサイサイ大統領が遠征中の日本人選手を官邸に招き、歓迎してもいた。
 日比国交正常化に先駆けて民間交流を実現させた東洋選手権とは何だったのか。本書は関係者の足跡を辿(たど)る。興行師は裏社会に繋(つな)がり、公職追放が解けた国士たちが蠢(うごめ)く。スポーツ興行をテレビ普及に利用した正力松太郎の思惑も働いていた。こうしたクセのある人々の動向を著者は丁寧に調べ、証言を集めた。
 中でもフィリピンの英雄フラッシュ・エロルデと名勝負を繰り広げた故・金子繁治への聞き取りは本書の白眉(はくび)だ。ファイトマネーを孤児院建設等につぎ込むエロルデを同じキリスト教徒として金子は敬い、親交を結んだ。そしてひとたびゴングが鳴れば、神の与え給(たも)うたボクシングという天職を互いに全うすべく、全力で打ち合ったのだという。
 その証言は当時のファンの心境を理解させてくれよう。我執を超えた二人の戦いの清々(すがすが)しさにファンは魅了され、熱狂したのだ。
 54年に東洋ボクシング連盟が設立された時の参加国は日本とフィリピン、タイだけ。「東洋」は興行の価値を高めるために用意されたフィクションだった。だが「東洋一」を懸けて戦うボクサーがもたらす感動は本物であり、それが日本のアジア回帰へ道を開いた。
 本書はボクシングに熱狂した時代と社会を生き生きと描くルポルタージュ的な性格と情報や資料の出所を明記しつつ議論を積み上げる学術書の体裁を兼ね備える。訴求力ある表現と調査研究の公共性を両立させた新しいアカデミック・ジャーナリズムの書き方を示した点でも評価できよう。
    ◇
 のりまつ・すぐる 77年生まれ。関東学院大学兼任講師(スポーツ社会学カルチュラル・スタディーズ)。
    −−「ボクシングと大東亜―東洋選手権と戦後アジア外交 [著]乗松優 [評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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「熱狂」が崩した国交断絶の壁|好書好日








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ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交
乗松 優
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覚え書:「TOKYOインテリアツアー [著]浅子佳英、安藤僚子 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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TOKYOインテリアツアー [著]浅子佳英、安藤僚子
[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)  [掲載]2016年08月28日   [ジャンル]アート・ファッション・芸能 
 
■巨大都市の行方、多面的に批評

 ポケモンGOは、既存の都市空間に異なる情報の層を重ねあわせたことで多くの人をひきつけ、外出をうながしたが、そもそもデザインに関心をもって街歩きをするのも似たような行為である。20年ほど前に『建築MAP東京』(TOTO出版)が刊行されたとき、各地に点在する膨大な数の現代建築を鑑賞しながら、都市を体験する楽しみをもらった。本書はインテリア・デザインを紹介する初の東京ガイドである。正直、筆者も知らない物件が多く、これによって新しい東京が見えてきそうだ。
 本書は、銀座、表参道・原宿、恵比寿・白金、中央線など、九つのエリアに分けているが、それぞれの冒頭に近代以降の都市環境の変遷を記述し、街の性格とインテリアの動向が結びつくことを示唆しつつ、分析を行う。例えば、1973年にPARCOが登場し若者の街として注目された渋谷で、今後の高層化と再開発によってストリート文化は生き残るのか?と問う。すなわち、刹那(せつな)的に消費されるものと思われがちなインテリアに対し、歴史的な文脈から位置づけながら、外部の都市と切り離されたものではないというのだ。
 このガイドは、おしゃれなデザインをただ紹介するものではない。2人の著者による論考、コラム、解説は、批評的かつ思想的であり、ときには辛辣(しんらつ)だ。例えば、バブルの反動からミニマルやシンプルを好む傾向は続くが、これがデザインを更新できるのか? 古き良きアメリカの流行は9・11後の保守回帰の表れではないか? などである。
 安藤僚子は、巨大過ぎる東京が誘発する表と裏の形成システムと街の新陳代謝をもたらすインテリアの関係を考察し、都市論としても読み応えがある。また浅子佳英は、日本では近代に発見されたインテリアの概念と日本人の「内面」を相互参照しながら、多様で複雑な未来への活路を探る。インテリアの批評宣言というべき本が登場した。
    ◇
 あさこ・よしひで 72年生まれ。建築家、デザイナー/あんどう・りょうこ 76年生まれ。インテリアデザイナー
    −−「TOKYOインテリアツアー [著]浅子佳英、安藤僚子 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞』2016年08月28日(日)付。

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巨大都市の行方、多面的に批評|好書好日


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TOKYOインテリアツアー
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覚え書:「軍事と大学、縮まる距離 防衛省公募の技術に応募多数」、『朝日新聞』2016年06月12日(日)付。

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軍事と大学、縮まる距離 防衛省公募の技術に応募多数
安倍龍太郎2016年6月12日

防衛装備庁が募集した研究テーマの一例(2016年度)
 防衛装備品に応用可能な技術開発のため、基礎研究を委託、最大で年3千万円を拠出する――。防衛省が昨年度はじめたこの制度に、大学などの研究者が関心を寄せている。戦中に兵器開発に携わった反省を踏まえ、大学は軍事研究と距離を置いてきたが、研究費は先細り、両者の距離が縮まっている。

 防衛省が始めたのは「安全保障技術研究推進制度」。防衛装備品への応用を見据えた研究テーマを掲げ、大学や独立行政法人、企業らを対象に提案を募る。防衛装備庁が選定した上で、資金提供し研究を委託する。

 昨年度は、「マッハ5以上の極超音速飛行が可能なエンジン」「昆虫や小鳥サイズの小型飛行体」の実現につながる基礎技術などをテーマに募集。大学の研究者などから109件の応募があった。同省は9件の研究を採択し、3億円の予算を配分した。

 有毒ガスを吸収する素材開発案が採択されたのは、豊橋技術科学大の加藤亮助教(分析化学)だ。加藤氏は朝日新聞社の取材に対し、「最終的な製品として、使い捨てのような安価な誰でも使える防毒マスクとなることを期待している」とした。

 加藤氏は、「人を守る研究だが、募集が防衛省で人を殺傷する兵器を作る誤解が生まれはしないか、という懸念があった」と打ち明ける。さらに「世界で研究者が兵器開発に加担した悲劇を考えると、安易に防衛省の募集に応募していいものなのか?との思いもあった」と振り返った。

 昨年度、防衛省は推進制度の概要に「依頼する研究内容は、防衛装備品そのものの研究開発ではなく、将来の装備品に適用できる可能性のある基礎技術を想定している」などと記した。今年度、募集を手がけた防衛装備庁は「基礎的な技術には多義性があり、様々な応用が考えられる」と書き込んだ。装備庁関係者は「防衛装備品そのものの開発ではないことを強調した。大学側に根強い『軍事研究に加担することになるのでは』との不安を払拭(ふっしょく)するためだ」と話す。推進制度周知のため、3月に都内で初めて説明会を開催。約50人の研究者らが集まった。今年度の予算は継続研究も含め、6億円に拡大された。

 推進制度は大学をはじめ、レベルの高い研究機関から基礎研究分野で協力を得たいとの狙いがある。基礎研究の充実をはかるため、6月2日には自民党国防部会が安倍晋三首相に、推進制度の予算を100億円規模に増額することを盛り込んだ「防衛装備・技術政策に関する提言」を手渡した。

交付金減り研究費に苦心

 大学側の苦しい財政事情が、推進制度への関心を呼び込む背景になっている。国立大学が法人化された2004年以降、国からの交付金は削減が続き、04年度と14年度を比較すると約1割、約1290億円減った。研究者たちは公募による競争的資金を得る必要が生じた。

 加藤氏も「基盤経費を補うためにいくつもの競争的資金に応募しなくてはならない」と打ち明ける。大学が加藤氏に支給する研究費は年間約20万円。競争的資金の一つである推進制度に研究が採択されたことで、年間474万5千円を国から受け取る。

 戦後、日本の学会は、1950年に日本学術会議が「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」とする声明を出すなど、軍事研究とは距離を置いてきた。戦時中、研究が軍部に利用されたとの反省からだ。ただ近年、介護福祉などの現場のほか、戦場でも使えるロボット技術など、民生と軍事の線引きが困難な技術が生まれている。

 今年5月26日、日本学術会議大西隆会長が会見を開き、「安全保障と学術に関する検討委員会」を設置したと発表した。現況を審議し、「あるべき関係」を探るためだ。4月25日には池内了・名古屋大名誉教授(宇宙物理学)らが、推進制度の広がりに危機感を募らせる他の研究者らと会見。「基礎研究だといくら強調しても、防衛予算のお金を使う以上は軍事研究だ」と訴えた。池内氏らは全国の大学をまわり、推進制度に応じないよう呼びかけている。

 だが昨年度、研究が採択されたある研究機関で働く若手研究者は「研究現場には、推進制度を正面から批判しにくい現状がある」と明かす。「若手は任期制も多く、雇用が安定しない。研究費が不足する中、結果を出すためどんな外部資金にも飛びつきたいのが本音。この弱みにつけ込まれてしまっている」(安倍龍太郎
    −−「軍事と大学、縮まる距離 防衛省公募の技術に応募多数」、『朝日新聞』2016年06月12日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/ASJ6B51JPJ6BUTFK008.html





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