今の政治に今の日本を見る、恰も下野の岩舟山の如し






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日記 明治45年1月16日
 今の政治に今の日本を見る、恰も下野の岩舟山の如し。岩舟山ハ奇景の独立山なり。この山より石材出づ。全山皆岩山なり。営業者争つて石材を伐る。山の風致を破るニ頓着なし。
 政治また然り。争つて天然に疵けまた深心を破るなり。曰く法律、曰く納税、曰く兵役、曰く学文、皆国その物を破りてその物を造ると云ふ。本来を誤りて憚らさるハ現今政治関係の通弊たる当世の大悪事たり。国家、社会、人類の生命を永遠せんとせバ、断じてこの大誤りを根底より改め天然の良能を発起せしむるの外、果してこれを実行断決するニ於てハ、憲法、法律、教育の渾てを全廃して、更天神を基とせる方法即ち広き憲法を設くべし。誠ニ天則ニよらバ即ち憲法の天ニかなふを云ふなり。真理を中心とする憲法なり。組織的を法とせるものニあらず。今の如きハ岩舟山を崩して千万年の天然力をこぼちて、一次の利を争ふニ過ぎず。人生の惑ここニ至つて極まれり。
    −−由井正臣・小松裕編『田中正造文集(二) 谷中の思想』岩波文庫、2005年、309頁。

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ちょっと気になることがあって田中正造翁(1841−1913)の文献を数日紐解いているのですが、いつの時代にあっても、そこで真面目に生きている人間を破壊しようとしてしまうのが国家というものなかもしれない……そのことだけは深く確認せざるを得ないという状況です。

いろいろと予断を許さない状況ではあるわけですけれども、「真ノ文明ハ 山ヲ荒ラサズ、川ヲ荒ラサズ 村ヲ破ラズ 人ヲ殺サザルベシ」なワケですが……、

ふうむ。

毎日の動向がこのところ……、

ぎゃふんですねw






⇒ ココログ版 今の政治に今の日本を見る、恰も下野の岩舟山の如し: Essais d'herméneutique


Shinnobunmeiha


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