公共哲学(現代)

覚え書:「著者来店 『フクシマの正義』=開沼博さん」、『読売新聞』2012年11月04日(日)付。

- 著者来店 「フクシマの正義」=開沼博さん現場を見つめ、考える 東日本大震災前に福島を歩き、地方と中央の関係から原発を考察した『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』で毎日出版文化賞を受賞した1984年生まれの社会学者である。本作は、…

覚え書:「今週の本棚:松原隆一郎・評 『それをお金で買いますか』=マイケル・サンデル著」、『毎日新聞』2012年08月19日(日)付。

- 今週の本棚:松原隆一郎・評 『それをお金で買いますか』=マイケル・サンデル著 (早川書房・2200円) ◇驚くべき「市場化」の実態を暴く 一昨年の夏、フォークの岡林信康のコンサートに行った時、曲の合間に岡林がこんなことを言った。「僕ら若い頃は…

覚え書:「今週の本棚:海部宣男・評 菊池誠・松永和紀ほか著『もうダマされないための「科学」講義』」、『毎日新聞』2011年10月16日(日)付。

- 今週の本棚:海部宣男・評 『もうダマされないための「科学」講義』 菊池誠・松永和紀ほか著 光文社新書・798円 ◇社会と科学を巡る論点を見極めるには 私たちの生活は、科学とは表裏一体の関係で結ばれている。人間の社会は科学と技術とそれらを基礎に…

ただ私は、原始的なものへのノスタルジーなど全然持ちあわせておりません

- −−私たちは、映像、音響、スペクタクルの社会のなかで生きています。この世界では、退いて反省するための場所はわずかしかありません。もしこのような発展がさらに速度を増せば、私たちの社会はその人間性を損失することになるのでしょうか。 もちろんその…

「現実生活の上で国家的忠誠が決定的に優位に立ったのは、ようやく十九世紀以後」のこと

- 今日世界中において「ネーション」は忠誠市場における、たとえ独占体ではなくも、少なくとも寡占体として公認されている。しかし人類史の長い発展過程から見れば、これはきわめて新しい現象であって、人間の忠誠対象はむしろ宗教上の絶対者(またはその代…

法を設けて人民を保護するは、もと政府の商売柄にて当然の職分なり。これを御恩と言うべからず

- そもそも御国恩とは何事を指すや。百姓町人らが安穏に家業を営み盗賊ひとごろしの心配もなくして渡世するを、政府の御恩と言うことなるべし。固よりかく安穏に渡世するは政府の法あるがためなれど、法を設けて人民を保護するは、もと政府の商売柄にて当然…

絶対的正義の主張は、血と涙に濡れた無用の犠牲を生む

- 絶対的正義の理念は幻想であり、存在するのは利益・利益衝突・闘争や妥協によるその解決のみである。合理性の領域に存在するのは正義でなく平和である。しかしたんなる妥協・たんなる平和に尽きない正義への希求・憧憬、高次の、至高の、絶対的な価値への…

個々人が(銘々別々に)本質的に情熱をもって一つのイデーに関係し、それから一致団結してその同じように一つのイデーに本質的に関係する、ということ

- 個々人が(銘々別々に)本質的に情熱をもって一つのイデーに関係し、それから一致団結してその同じように一つのイデーに本質的に関係する場合、その関係は完全であり正常である。その関係は、個人個人で別々である(各人は自分の自己をそれぞれ独立にもっ…

「合理的主義的・演繹的思考」も大事にされなければ、「書かれた言葉よりも、つねにより豊かな、より生き生きとした現実」をもって対抗することすらもできないのが現況でしょう

- 具体的なものへの執着 この保守主義的な体験と思考との本質的特徴のひとつは、直接に現存するもの、実際的に具体的なものへの執着である。ここから、具体的なものに対する新式の、いわば感情移入的体験が生まれるのであるが、当時「具体的」という言葉が反…

「状態(ヘクシス)」としての正義

- あらゆるひとびとの解して正義(デイカイオシュネー)となすところのものは次のような「状態(ヘクシス)」にほかならないのをわれわれは見る。正義とは、すなわち、ひとびとをして正しいものごとを行うたちのひとたらしめるような「状態(ヘクシス)」、…

一七八九年の集団は、つねに偶然だったとは言わぬまでも、少なくとも革命的行動とは無縁の動機で、まず純粋な群衆として形成された

- 他方、革命の歴史家たちは、暗黙のうちに、革命的群衆を、多少とも組織性をもった行動や祝典参加のためなどに、さまざまな個人が、共通の情念ないし同一の理性的判断に基づいて、自覚的に集まったもの、とみなしているように思われる。しかし、こうした集…

「国民の生存そのもの、あるいはまた国の指導者や国民の基本的な利益が危機に瀕しているとのニュースが集合体の内部に拡まると、まことに印象的な形でこの現象が生ずる」はずなのに

- (一) 人類については、純粋な集合体、つまり純粋状態の群衆は存在しないと、逆説的にではなしに言うことができる。というのは、純粋な集合体を私は、異質な要素より成るものと定義したが、人類にあっては、集合体の構成メンバーはつねに何らかの程度に集…

今の政治に今の日本を見る、恰も下野の岩舟山の如し

- 日記 明治45年1月16日 今の政治に今の日本を見る、恰も下野の岩舟山の如し。岩舟山ハ奇景の独立山なり。この山より石材出づ。全山皆岩山なり。営業者争つて石材を伐る。山の風致を破るニ頓着なし。 政治また然り。争つて天然に疵けまた深心を破るなり。曰…

寛容こそ、人々をその住地に定着させ、各々の職分において多くのことを達成せしめるために必要な条件である

- 寛容こそ、人々をその住地に定着させ、各々の職分において多くのことを達成せしめるために必要な条件である。宗教的迫害行為に赴き易い教条主義や不寛容主義は、国家をしてその住民を根絶させ、貧困ならしめ、かつ無秩序の状態を現出せしめるにいたるであ…

現実から遊離するな、生と一体化せよ、生に責任を感ぜよ

- 不運なことに、このヨーロッパの民主主義思想はドイツにおいてはあまり強い政治的力を持つにいたらず、権力は決してこれと結びつこうとはしませんでした。むしろ、他の諸国の場合とは異なって、この理念は歴史的にはドイツの無力とほとんど同義になってい…

十五、六歳の頃、ブルックリンの通りを、わたしはペーパー版プラトンの『共和国』の表紙を外側に見えるようにして歩いていた

- 十五、六歳の頃、ブルックリンの通りを、わたしはペーパー版プラトンの『共和国』の表紙を外側に見えるようにして歩いていた。その一部を読んで、余りよく理解できなかったけれども、わたしは感激し、なんとくなくすばらしさを感じていた。年上の人がこの…

【覚え書】【研究ノート】アマルティア・セン 国籍と市民権 アイデンティティ

- 現代における国籍と市民権の重要性を否定することはできないが、われわれは次のようにも問うてみなければならない。国境を越えたひとびとのあいだの関係をどのように理解すればいいのだろうか、と。こうした人々のアイデンティティにはとりわけ民族や政治…

【覚え書】【研究ノート】ジジェク『ルソー、ジャン=ジャックを裁く−−対話』 情念 幸福 自己愛 利己愛

- 素朴な情念はすべて直接にわれわれの幸福をめざしているので、それに関係のある目標しかわれわれをかかわらせず、自己愛のみを原理としているので、本質的にまったく優しく穏やかなものなのです。しかし障害によって目標からそらされると素朴な情念は到達…