覚え書:「異論反論 対日感情が好転しません 寄稿 城戸久枝」、『毎日新聞』2011年10月26日(水)付。






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異論反論 対日感情が好転しません 寄稿 城戸久枝

「今」の中国、見極めよう
 中国に対して、みなさんはどんなイメージを持っているだろうか?
 振り返れば、注目が集まるのはネガティブな話題が多い。偽商品、パクリ疑惑、記憶に新しいのは高速鉄道の事故……。昨年秋の尖閣島沖衝突事件や、それらを発端に起こった反日の動きなどは、中国といった国に対する不信感を増長させたはずだ。
 どれも簡単に見逃せる問題ではない。ただ、これらのネガティブな話題が繰り替えされることにより、中国のマイナスの印象が強められていることも否めない。
 今後、中国に対するマイナスイメージを払拭するのは難しいだろう。
 思えば私たちは常に、中国とどう向き合うべきか、考えあぐねてきたように思う。そしてうまくいかない原因を中国に見出そうとしていた。だが、その原因の一つは、私たち自身にもあるのではないかと私は思う。
 さまざまな矛盾や歪みを抱えながらも成長を続ける中国は、いまや世界第2位の経済大国となった。一方で日本は長引く不況の中、経済が低迷し続けている。
 立場は大きく変わっているはずなのに、日本人の中国に対するとらえ方は、日本が経済大国といわれた時代とほとんど変わってはいない。
 しかし、本当にそれでいいのだろうか?
 私自身も、中国とは長い付き合いになるが、今の中国や中国の人々の変化に付いていくのは難しい。
 27年前、私は家族と初めて中国を訪れた。小型四輪駆動車に乗って父の養母の家を訪れた際、何十人もの人々に囲まれ、恐ろしかった印象が強い。中国は自分とは別世界の、遅れた国だと思っていた。
 十数年前、私は中国の長春市に留学していた。ささいなことが原因で反日感情の矢面に立たされた苦い経験もある。
 中国で理不尽な問題や矛盾に直面したとき、「やっぱり中国は……」と自分に言い聞かせて納得させていた。
 しかし、北京五輪が開催された2008年秋に訪中した際には、街の劇的な変化に驚かされた。郵便局で秩序正しく並ぶ人々を見て、中国の人々の意識が確実に変化しているのを肌で感じた。

国交正常化40周年で友好の広がりに期待
 日中関係は今も不安定な要素が多い。しかし、さまざまな可能性が秘められているとも思う。今後、中国とどう向き合っていくべきか? もちろん、中国側にも原因はあるだろう。しかし、私たち日本人が、変わる必要もあるのではないか?
 まずは、中国に対する凝り固まったマイナスイメージから抜け出そう。そして、あらゆる側面から今の中国を見極めるのだ。
 来年、日中国交正常化40周年を迎える。中国との友好が、新たな形で広がっていくことを期待している。

きどひさえ ノンフィクションライター。1976年愛媛県生まれ。父は中国残留孤児。中国留学時代の恋愛模様をつづった「長春ビエンチャン行青春各駅停車」を11月半ばに出版する。
    −−「異論反論 対日感情が好転しません 寄稿 城戸久枝」、『毎日新聞』2011年10月26日(水)付。

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⇒ ココログ版 覚え書:「異論反論 対日感情が好転しません 寄稿 城戸久枝」、『毎日新聞』2011年10月26日(水)付。: Essais d'herméneutique


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あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅

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