どんなにきびしく暑い日でも かならず夕暮れが慰めてくれる そして愛情をこめ おだやかに そっと 母のような夜がその日を抱きしめてくれる



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それを忘れるな

どんなにきびしく暑い日でも
かならず夕暮れが慰めてくれる
そして愛情をこめ おだやかに そっと
母のような夜がその日を抱きしめてくれる

私の心よ おまえも おまえ自身を慰めるがよい
おまえのあこがれがどんなに激しくおまえを悩まそうと
おまえを母のようにやさしく抱きしめてくれる
夜が近づいているのだ

ひとつのベッドが、ひとつの棺が
安らいを知らぬこの遍歴者のために
見知らぬ人の手で用意されるだろう
その中でおまえはついに休息するのだ

それを忘れるな 私の奔放な心よ
どんなよろこびをも愛するのだ
そしてにがい苦しみをも愛するのだ
おまえが永遠に休息せねばならぬときまで

どんなにきびしく暑い日でも
かならず夕暮れが慰めてくれる
そして愛情をこめ おだやかに そっと
母のような夜がその日を抱きしめてくれる
    (一九〇八年)
    −−ヘルマン・ヘッセ(フォルカー・ミヒェルス編、岡田朝雄訳)『地獄は克服できる』草思社、2001年、16−17頁。

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写真は昨年の3月11日の夕方の都下。
夕焼けだったんだなあと思い出す。

今日は饒舌になれません。

ヘッセ(Hermann Hesse,1877−1962)の詩をひとつ紹介しておきます。



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