覚え書:「再生への提言:東日本大震災 福島の「草の根」に希望=「東北学」を提唱する福島県立博物館長・赤坂憲雄氏」、『毎日新聞』2012年3月17日(土)付。


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再生への提言:東日本大震災 福島の「草の根」に希望=「東北学」を提唱する福島県立博物館長・赤坂憲雄

 ◇赤坂憲雄(あかさか・のりお)氏
 復興の動きはあきれるほど遅い。国や県には将来へのビジョンが乏しいからだ。被災地はそんな国や県を見切り始めている。もはや受け身では何も動かないと、人々は痛みとともに気づいてしまった。

 被災市町村の首長たちは、それぞれに厳しい状況のなかで孤立を恐れず覚悟を決めて発言している。多くの人々が試行錯誤を繰り返しつつ、草の根のレベルから声を上げている。そうした「下」からの動きこそ支援してほしい。

 福島はかつて自由民権運動の土地だった。その記憶は今も生きている。シンポジウムの場などで、誰からともなく「自由民権運動みたい」という声が聞こえてくる。現実が厳しいからこそ人々は現代の自由民権運動を求めている。

 他方、中央の東北への視線は相変わらずだ。原発事故の当事者である東京電力の姿が福島ではほとんど見えない。十分に責任を果たしてきたとも思えない。それなのに東電批判の声はとても小さい。

 10万人の「原発難民」を生んだ福島に、原発との共存はありえない。福島県には、30年間で約3000億円の交付金が下りたと聞く。小さな村の除染費用にすら足りない。「契約」は破綻した。原発地震であれ津波であれ、絶対に事故を起こしてはならなかったのだ。福島からの脱原発イデオロギーではない。

 放射能による汚染は、福島県を越えて東日本全域に少なからず広がっている。汚染とともに生きる選択肢しか残されていない。可能な限り子供たちの健康を守るシステムを構築しながら、しなやかに、したたかに「腐海」(「風の谷のナウシカ」)と共に生きる知恵を学ばねばならない。

 どんなに困難でも、自然エネルギーへの転換しかない。風力・太陽光・地熱・バイオマスなどを組み合わせ東北全域を自然エネルギーの特区にするような、大胆で将来を見据えた提案がほしい。日本にはその技術も経済力もあり、再生へのチャンスもある。【聞き手・鈴木英生】

人物略歴 復興構想会議委員を務めた。58歳。
    −−「再生への提言:東日本大震災 福島の「草の根」に希望=「東北学」を提唱する福島県立博物館長・赤坂憲雄氏」、『毎日新聞』2012年3月17日(土)付。

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