もうすこし信じることをやめて、その分認識するように・もうすこし願望することをやめて、その分活動するように・願望することをやめて、その分愛するように


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 願望することを自分に禁じるのも、絶望を望むのも問題とはなりません。肝心なのは、理論的な領域では、もうすこし信じることをやめて、その分認識するようにすることですし、実践の、つまりは政治や倫理の領域では、もうすこし願望することをやめて、その分活動するようにすることです。そして最後に、情動や精神の領域においては、もうすこし願望することをやめて、その分愛するようになることです。
    −−アンドレコント=スポンヴィル木田元、小須田健、C.カンタン訳)『幸福は絶望のうえに』紀伊國屋書店、2004年、96頁。

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哲学をよく知らない初学者に「幸福とは何か」について考察したスポンヴィル()の一冊を、少し調べることがあり再読していたのですが、この小著によって刮目されることがしばしば。幸福を論じたものでありながら、第一級の現代批評ともなっていますね。


1)「理論的な領域では、もうすこし信じることをやめて、その分認識するように」
昨年の震災以降、露わになった転倒がここなのでしょう。「信じることをやめて、その分認識する」ことの大切さ

2)「実践の、つまりは政治や倫理の領域では、もうすこし願望することをやめて、その分活動するように」
テレビを見ながら政治家たちの失態に対して悪態をつく一方、根拠のない変革への憧憬を忖度する態度。願望する対象の間違いという問題への指摘。


3)「情動や精神の領域においては、もうすこし願望することをやめて、その分愛するように」
最後にまとめとして、願望することをやめて、その分愛するようにという指摘。

人生を背負って、歩み続けるしかないわけですから、この3つのポイントは大切にしたいと思います。恐らく願望すべきことがらに願望せず、認識せずことがらに対して認識せず、愛すべきことがらに対して愛せずというのでは本末転倒どころか不幸になってしまうという話ですね。

さて、少し風邪で調子がわるいので今日はこの辺でご寛恕を。








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幸福は絶望のうえに
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