覚え書:「今週の本棚・新刊:『風化する光と影 “メディアから消えつつある震災”の中間報告』=太田伸幸ほか編」、『毎日新聞』2012年05月06日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『風化する光と影 “メディアから消えつつある震災”の中間報告』=太田伸幸ほか編
毎日新聞 2012年05月06日 東京朝刊

 (マイウェイ出版・1000円)
 震災報道から「見たくないもの」が減ったいま、「被災地モノは売れない」と知りながらもしぶとく被災地に足を運ぶフリーランス記者たちの報告集。釜石でも、多くが生き延びた東中の「奇跡」と津波避難所に指定されていない防災センターで六三人が亡くなった「悲劇」は隣合わせだ。「光と影」を丹念に追う。
 影もさまざま。当初は日常化していた略奪は、ATMを狙うプロの仕業だけではない。品の良い高齢夫婦や自転車に乗った中学生も、コンビニから食料を奪った。復興の現実としては除染がゼネコンのビジネスになり、不動産市場が活況を呈した仙台にはデリヘル業者が集結した。
 記録し残したいのが、今後への教訓だ。だが他人を思いやる共同体の論理は、責任追及の回避につながる。多数死者を出した大川小では、原因究明が混迷している。仮設入居でコミュニティを分断すれば孤独死や自殺者が増えるというのは神戸の教訓だが、生かされていない。被災直後に教員が人事異動で生徒と引き裂かれた例も報告されている。
 無事に家族に会えた女子高生の「つぶやき」全文は感動的で、「光」には救われるのだが。(空)
    −−「今週の本棚・新刊:『風化する光と影 “メディアから消えつつある震災”の中間報告』=太田伸幸ほか編」、『毎日新聞』2012年05月06日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20120506ddm015070026000c.html




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